【小児歯科医監修】赤ちゃんの歯石、見つけたら?歯肉炎リスクと正しい除去・予防法|みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック|御影
2017年09月21日
執筆・監修:河崎 真也(みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/日本歯科放射線学会 認定医・日本小児歯科学会 所属)
最終更新日:2026年4月27日 / 初回公開:2017年9月21日
本記事は、赤ちゃんの歯石について、小児歯科の現場知見をもとに保護者の方向けにまとめた内容です。
「うちの子の前歯の裏側、白っぽい・茶色っぽい何かがついている……」――1歳前後のお子さまの歯を毎日のように見ているお母さんが、ふと気づいてご相談くださることがあります。その正体、もしかしたら「歯石」かもしれません。
「赤ちゃんに歯石?大人だけのものじゃないの?」と驚かれる方も多いのですが、実は赤ちゃんにも歯石はつきます。ただし、大人とは違う注意点があり、ご家庭での取り扱いにも気をつけたい点があります。この記事では、赤ちゃんの歯石ができる仕組み、放っておくとどうなるか、正しい対処と予防法までを小児歯科医の立場からお伝えします。
神戸市東灘区御影で小児歯科を併設している当院でも、赤ちゃんの歯石・歯肉炎についてのご相談を保護者の方からお受けしています。離乳食の進み方や仕上げ磨きのコツも、健診時にご案内しています。
目次
1. そもそも歯石とは?歯垢との違い
「歯垢」と「歯石」は別物ですが、混同されることが多い言葉です。
- 歯垢(プラーク) — 食べかすと細菌がまざった、粘り気のある「やわらかい汚れ」。歯ブラシで落とせる
- 歯石 — 歯垢が唾液中のミネラル(カルシウム)と反応して石のように固まったもの。歯ブラシでは落とせない
歯垢が歯石になるまでの時間は、個人差があるものの2〜3日といわれています。一度歯石になってしまうと、家庭での歯磨きで除去するのは事実上不可能。歯科医院で専用器具を使って取り除く必要があります。
2. 赤ちゃんに歯石がつくのはなぜ?
大人と同じく、赤ちゃんにも歯石はつきます。歯が生えていれば、年齢に関係なく歯垢がたまり、歯石化する可能性があるからです。
特に赤ちゃんで歯石ができやすいのは次の場所です。
- 下の前歯の裏側 — 唾液腺(舌下腺)の出口に近く、唾液中のミネラルが沈着しやすい。**最も歯石ができやすいポイント**
- 上の前歯の表側・歯ぐきとの境目 — 哺乳瓶やコップの飲み物が残りやすい
- 奥歯(乳臼歯)の咬み合わせの溝 — 食べかすが溜まりやすい
なお、歯石のつきやすさは体質による個人差もあります。同じケアをしていても、つきやすい子とつきにくい子がいるのは事実です。「うちの子だけ歯石が……」と思いつめる必要はありません。
3. 気をつけたいのは「虫歯」より「歯肉炎」
「歯石があると虫歯になりやすいのでは?」と不安に思われる方が多いのですが、実は赤ちゃんの歯石は虫歯への直接的な影響は少ないとされています。理由は次の通りです。
- 赤ちゃんの口の中には、もともと虫歯菌(ミュータンス菌)はいない
- 主な感染経路は大人の唾液から(口移し・食器の共有など)
- 赤ちゃんは唾液分泌量が多く、虫歯菌が繁殖しにくい環境
それよりも問題になるのは、「歯肉炎(しにくえん)」のリスクです。歯石は表面がザラザラしているため、その上にさらに歯垢がつきやすくなります。歯垢の中の細菌が歯ぐきに炎症を起こすのが歯肉炎で、進行すると歯ぐきからの出血や腫れにつながります。
乳幼児期の歯肉炎は将来の歯周病のリスク因子にもなるため、「赤ちゃんだから歯石は気にしなくていい」ではなく、適切に対処することが大切です。
4. 絶対にやってはいけないNG行動
「歯石が気になるから、ちょっと取ってみよう」――この気持ちはよくわかりますが、ご家庭で歯石を取るのは絶対に避けてください。
❌ NG①:楊枝・爪・硬い物で削り取る
歯石は非常に固く、家庭の道具では取れません。無理に削ろうとすると、歯のエナメル質を傷つけたり、歯ぐきを切ってしまうリスクがあります。傷ついた歯ぐきからは細菌感染も起こりやすくなります。
❌ NG②:市販の「歯石取りグッズ」を子どもに使う
大人用の市販スケーラーは、歯科衛生士でも訓練が必要な道具です。赤ちゃんの口で使うのは危険。動いてしまうお子さまへの使用は、深刻なケガにつながります。
❌ NG③:強くゴシゴシ磨いて削ろうとする
どれだけ強く歯ブラシをかけても、固まった歯石は取れません。逆にお子さまの歯ぐきを傷つけ、歯磨き嫌いになる原因にもなります。
5. 歯科医院での歯石除去の流れ
小児歯科では、赤ちゃんの歯石除去にも対応しています。お子さまが嫌がらないよう、無理のない範囲で進めるのが原則です。
○ 一般的な流れ
- 口腔内チェック — 歯石の量・つき方・歯ぐきの状態を確認
- 専用器具で除去 — 小児用のスケーラー(手用器具)でやさしく除去。超音波スケーラーは怖がるお子さまには無理に使いません
- 歯面研磨(必要に応じて) — 歯石除去後、表面をなめらかにして再付着を防ぎます
- フッ素塗布・歯磨き指導 — 予防のためのフッ素塗布と、ご家庭でのケア方法をご案内
○ 「経過観察」を選ぶ場合も
歯石が少量で、お子さまが処置を強く嫌がる場合は、無理に除去せずフッ素塗布と日常ケアの強化で経過観察するケースもあります。「歯石を取ること」自体が目的ではなく、「健康な歯と歯ぐきを守ること」が目的なので、お子さまの負担と効果のバランスを見ながら判断します。
6. 日常でできる4つの予防法
歯石は「歯垢を歯石になる前に落とす」ことが最大の予防です。家庭でできる4つのポイントです。
○ 仕上げ磨きを毎日(特に夜)
下の前歯の裏側は、お子さま自身では磨きにくい場所。仕上げ磨きで保護者の方が必ずチェックしましょう。歯ブラシを下から斜めに当てるのがコツです。
○ ジェル状フッ素配合歯磨き粉を活用
フッ素は歯質を強化し、虫歯と歯肉炎の両方を予防します。年齢に応じた濃度・量を守りましょう(生後6ヶ月〜3歳:500ppm・米粒大/3〜5歳:1000ppm・グリーンピース大)。
○ 飲食はメリハリをつける
「だらだら食べ」「だらだら飲み」は歯垢がつきやすくなる最大の原因。食事と食事の間に休憩時間(ブレイクタイム)を作り、お口の中を休ませてあげましょう。寝る前のジュース・甘いミルクは特に避けたいポイントです。
○ 3〜4ヶ月ごとの定期検診
歯石ができる前に歯垢を取ってもらうのが理想です。お子さまが「歯医者さんは怖くない」と思える関係づくりにもつながります。
7. 受診の目安:こんなときは歯科医院へ
次のサインがあれば、一度歯科医院でご相談ください。
- 前歯の裏側に白っぽい・茶色っぽい固まりが見える
- 歯と歯ぐきの境目に汚れが溜まっている
- 歯ぐきが赤く腫れている/歯磨きの時に出血する
- 口臭が強くなった気がする
- 最初の歯が生えてから半年〜1歳の誕生日までに一度も歯科受診していない
まとめ
赤ちゃんの歯石は珍しいことではなく、ご家庭での過度な心配は不要です。ただし、放置は歯肉炎リスクにつながるため、見つけたら適切な対処を。
この3点を覚えておいていただければ、お子さまの歯と歯ぐきの健康を守る基本ができます。気になることがあれば、いつでも当院にご相談ください。
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参考文献・参考資料
- 一般社団法人 日本小児歯科学会
- 公益社団法人 日本歯科医師会
- 厚生労働省「歯の健康」
執筆・監修:河崎 真也(かわさき まさや)
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/医療法人茜会 理事長
専門:小児歯科/小児矯正/口腔機能育成
所属:日本歯科放射線学会 認定医、日本小児歯科学会
「明朗・愛和・喜働」を理念に、お子さまとご家族に寄り添った歯科医療を提供しています。
お子さまのお口のことで気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。




