子どもの歯ぎしり|年齢別の対応と受診目安|小児歯科医監修|みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック
2026年05月1日
執筆・監修
河崎 真也(かわさき まさや)
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/医療法人茜会 理事長
日本歯科放射線学会 認定医・日本小児歯科学会 所属
公開日:2026年5月1日
「うちの子、夜中にギリギリって音を立てているんです。起こした方がいいの?歯が削れてしまうの?」——小児歯科の外来で、こうした相談は月に何度も寄せられます。特に乳幼児〜小学校低学年のお子さまを持つ保護者の方から多く、「自分が子どものころも歯ぎしりしていたけれど治った」「でも放っておいていいのか不安」という声が続きます。
結論からお伝えします。子どもの歯ぎしりは多くの場合、発育過程の生理的な現象であり「病気」ではありません。乳歯列〜混合歯列期は歯並びや咬み合わせが目まぐるしく変化するため、脳が咬み合わせを微調整しようとして起こるとも考えられています。ただし、年齢・頻度・症状によっては歯科受診が必要なケースもあります。この記事では、年齢別の特徴・原因・ご家庭でできること・受診が必要な目安を順にご説明します。
子どもの歯ぎしりは「病気」か「習慣」か
睡眠時ブラキシズムとは
歯ぎしり・食いしばり・タッピング(カチカチする動作)をまとめて「ブラキシズム」と呼びます。睡眠中に起こるものは「睡眠時ブラキシズム」と分類され、成人では顎関節症や歯の磨耗との関連で問題視されますが、小児の睡眠時ブラキシズムは成人とメカニズムが異なります。
日本小児歯科学会や国際的な研究によると、小児期の歯ぎしりは発達に伴う一過性の現象であることが多く、乳歯列期〜混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する時期)に最も多く見られます。歯が生え変わるたびに咬み合わせが大きく変化するため、脳が新しい咬み合わせに「慣れようとする反応」として歯ぎしりが起きるという考え方もあります。
成人の歯ぎしりとの違い
成人の歯ぎしりは、ストレス・不眠・噛み合わせの異常・カフェインの過剰摂取などが主な原因として挙げられ、慢性化すると歯の摩耗・顎関節の痛み・頭痛につながります。一方、子どもの歯ぎしりは成長が終わると自然におさまるケースが大多数です。「歯が削れてしまうのでは」と心配される保護者の方は多いのですが、乳歯はもともと永久歯より硬度が低く、ある程度の摩耗は生理的な範囲内です。
「習慣だから大丈夫」と言い切れないケース
多くは生理的な現象とはいえ、歯ぎしりがサインになっている場合もあります。睡眠の質の低下・鼻閉(鼻づまり)による口呼吸・精神的なストレス・顎の発育不全などが背景にあるときは、そのまま様子を見るだけでは対処が不十分になる可能性があります。「なんとなく音が気になる」だけでなく、後述するチェックリストに複数当てはまる場合はご相談ください。
年齢別の歯ぎしりの特徴と原因
0〜2歳:乳歯が生え始める時期
生後6〜8か月ごろから乳歯が生え始め、1歳前後にはカチカチと歯をぶつける動作が見られることがあります。これは新しく生えてきた歯の感触を確かめる行為であり、咬み合わせを把握するための探索的な動きです。口腔機能の発達段階として自然なもので、ほとんどの場合は乳歯が揃う2歳半〜3歳ごろまでに落ち着きます。
この時期に注意したいのは、歯ぐきのかゆさや痛みを和らげようと昼夜問わずかみ合わせる場合です。歯ぐきが赤く腫れていたり、ぐずりが増えたりしているようなら、まずかかりつけの小児科・小児歯科に相談しましょう。
3〜5歳:乳歯列が完成する時期
乳歯20本が生え揃うこの時期は、睡眠中の歯ぎしりが最も多く報告される年代です。研究によって異なりますが、就学前の子どもの3〜5割程度に何らかの睡眠時ブラキシズムが見られるとされています。原因としては以下が考えられています。
- 咬み合わせの微調整(脳が顎の位置を学習している段階)
- 保育園・幼稚園入園など環境変化によるストレス
- 鼻閉・扁桃肥大による口呼吸
- 睡眠の深さの変動(レム睡眠時に起きやすい)
音が大きくても多くは生理的な範囲です。ただし「毎晩激しい音が続いていて、乳歯の先端が明らかに平らになってきた」「朝に顎が痛いと訴える」場合は、一度ご確認ください。
6〜9歳:前歯の生え変わりが始まる時期
6歳前後に最初の永久歯(第一大臼歯・下の前歯)が生え始め、咬み合わせが大きく変化します。この時期に一時的に歯ぎしりが増えるお子さまは少なくありません。新しい永久歯と残っている乳歯の高さが異なるため、脳が咬み合わせを再構築しようとすることが背景にあります。
また小学校入学に伴う生活リズムの変化や精神的な緊張が歯ぎしりを増やすこともあります。生え変わり期の歯ぎしりは、永久歯への移行が一段落する9〜10歳ごろに落ち着くことが多いです。詳しい生え変わりの流れについては、「乳歯から永久歯へ|生え変わりの時期と順序」もあわせてご覧ください。
10〜12歳:永久歯列完成に向かう時期
この時期に歯ぎしりが持続・強化されている場合、咬み合わせの問題や顎の発育と関連している可能性が出てきます。永久歯がある程度揃った段階でも歯ぎしりが続いているなら、咬み合わせの確認・必要に応じた矯正相談を検討する目安になります。また中学受験や習い事などのストレスが影響することもあります。
ご家庭でできる観察と対処法
「歯ぎしり観察メモ」をつけてみる
歯ぎしりは夜間に起きるため、保護者の方が実際に気づくのは「音」がほとんどです。受診の際に情報が整理されていると診察がスムーズになりますので、以下を簡単にメモしておくことをおすすめします。
- いつ頃から気づいたか(月齢・年齢)
- 音の頻度(毎晩か、週に数回か)
- 音の種類(ギリギリ・カチカチ・グッと力を入れる)
- 起きたときの様子(顎の痛み・頭痛の訴えがあるか)
- 最近の生活変化(入園・入学・引越し・家族の変化など)
睡眠環境・口呼吸を見直す
睡眠の質が悪いとブラキシズムが増えやすいとされています。寝室の温度・湿度・光・騒音など睡眠環境を整えることが第一歩です。また口をポカンと開けたまま寝ている、いびきをかく、朝起きると口が乾いているといった様子が見られる場合は、鼻閉や扁桃肥大が背景にある可能性があります。口呼吸は歯ぎしりの一因になるだけでなく、顎の発育にも影響しますので、耳鼻科への相談もご検討ください。
ストレスを減らす日常のヒント
子どものストレスが睡眠時ブラキシズムを増やすことは複数の研究で指摘されています。就寝前の激しいゲームや動画視聴を控え、リラックスできる時間(読み聞かせ・お風呂・軽い会話)を確保することが大切です。ただし「歯ぎしりをしてはいけない」と注意すると逆に意識させてしまうため、お子さまに直接指摘するのは避けましょう。
起こしたり、やめさせようとしたりしなくてよい
夜中の歯ぎしり音が気になってお子さまを起こしてしまう保護者の方もいますが、睡眠の途中で起こすことは睡眠リズムを乱すためおすすめできません。歯ぎしりをやめさせるために頬を触ったり、顎を押さえたりすることも、睡眠の質を下げる可能性があります。原則として「観察はするが、介入はしない」が基本姿勢です。
受診が必要な目安・チェックリスト
こんなときは歯科へ
以下のチェックリストで1つでも当てはまる場合は、一度ご相談ください。複数当てはまる場合は早めの受診をおすすめします。
- 🦷 乳歯・永久歯の先端が明らかに平らに削れてきた
- 😣 朝起きると「あごが痛い」「顔が疲れた感じ」と訴える
- 🔊 歯ぎしりの音が非常に大きく、別室でも聞こえる
- 😴 歯ぎしりが毎晩長時間続いており、睡眠が浅そう
- 👄 口をポカンと開けて寝ている・いびきをかく
- 📅 10歳を過ぎても歯ぎしりが続いている
- 😰 昼間も食いしばり・歯をカチカチさせる動作がある
- 🦴 咬み合わせが明らかにずれている・片側だけで噛んでいる
定期健診での「歯ぎしりチェック」が大切な理由
歯ぎしりによる歯の摩耗は、鏡の前では気づきにくい歯の面(舌側・咬合面の奥)にも及ぶことがあります。3〜4か月ごとの定期健診では、摩耗の程度・咬み合わせの変化・顎の動きを専門的に確認します。「音は前からするけど、一度も診てもらったことがない」という場合は、健診のつもりでお気軽にご来院ください。
耳鼻科・小児科との連携が必要なケース
口呼吸・いびき・睡眠時無呼吸が疑われる場合は、耳鼻科で鼻・扁桃の状態を確認することが先決になります。また発達面の特性(感覚過敏など)により日中の食いしばりが強いお子さまについては、小児科・発達支援の専門家と歯科が連携して対応します。当院では必要に応じて適切な医療機関をご案内しています。
歯科での診察内容と対応
初診で確認すること
当院では初診時に「歯ぎしりの経緯ヒアリング→口腔内視診→咬合紙による咬み合わせ確認→必要に応じてレントゲン」という流れで診察します。歯の摩耗パターン・乳歯の残存状況・永久歯の萌出状況・顎の左右差などを確認し、「経過観察でよいか」「何らかの介入が必要か」を保護者の方にご説明します。
子どもへのマウスピースは基本的に使わない
成人の歯ぎしり治療では夜間のマウスピース(スプリント)が一般的ですが、成長期の子どもに対してはほとんど適応しません。乳歯列〜混合歯列期にマウスピースを装着すると、顎の発育を妨げる可能性があるためです。また生え変わりのたびにサイズが合わなくなります。子どもの歯ぎしりに対する歯科的アプローチは「経過観察・生活指導・定期的な咬合確認」が中心です。
咬み合わせの問題が見つかった場合
診察の結果、上下の歯がうまく噛み合っていない「咬合の不正」や、顎の成長バランスに問題があることが確認された場合は、矯正相談をご提案することがあります。口腔機能育成の観点から、顎の成長を誘導するトレーニングや装置を検討する場合もあります。矯正の開始時期は症状によって異なりますので、詳しくは「年齢別の矯正治療の考え方」もご参照ください。
歯ぎしりと歯並び・矯正の関係
歯ぎしりが歯並びに与える影響
軽度の歯ぎしりが直接的に歯並びを悪化させることは多くありませんが、長期間・高頻度で強い力がかかり続けると、歯の傾きや摩耗が蓄積することがあります。特に「特定の歯だけに強く力がかかる咬み合わせ(早期接触)」がある場合、その歯への負担が大きくなります。
矯正治療と歯ぎしりの関係
「矯正をすれば歯ぎしりが治る」というわけではありませんが、咬み合わせが整うことで顎にかかる力が均等になり、歯ぎしりの誘因のひとつが解消されることが期待できます。逆に言えば、歯ぎしりがある子どもの咬み合わせを整えることは、歯への負担を分散するうえでも意義があります。矯正の開始タイミングや必要性については、お口の状態を見て判断しますので、まずはご相談ください。
「歯ぎしり=矯正が必要」ではない
矯正記事をお読みの方が「うちの子も歯ぎしりするから矯正が必要?」と感じることもあるかもしれませんが、歯ぎしりと矯正の必要性は別の話です。歯ぎしりをしていても咬み合わせ・歯並びに大きな問題がなければ矯正は不要ですし、歯ぎしりがなくても歯並びの問題があれば矯正を検討することになります。まず「お口の全体像の把握」が大切です。
よくあるご質問
Q. 歯ぎしりは遺伝しますか?
「親も子どものころ歯ぎしりをしていた」というお話はよく聞きます。睡眠時ブラキシズムには遺伝的な要因が関与する可能性が研究で示唆されていますが、遺伝だけで決まるものではなく、環境・ストレス・口腔の状態なども影響します。「親が歯ぎしりをしていたから子どももする」と決まっているわけではありませんし、「だから仕方ない」と放置するものでもありません。
Q. 昼間に食いしばる癖がありますが、夜の歯ぎしりと違いますか?
昼間に意識的・無意識的に歯をかみしめる「覚醒時ブラキシズム」は、睡眠時ブラキシズムとは別のメカニズムで起きるとされています。集中しているときや緊張しているときに出やすく、習慣的なものは本人への気づきを促すアプローチが有効です。昼夜ともに食いしばりが強い場合は、顎への負担が大きくなるためお早めにご相談ください。
Q. 市販のマウスピースを試してもいいですか?
市販品は成人向けに設計されており、成長途中のお子さまの顎に合っていないことがほとんどです。サイズが合わないマウスピースは誤飲・顎の発育への影響・睡眠中の外れによる事故のリスクがあります。子どもへの市販マウスピースの使用は、歯科医師に相談せず独断で行うことはおすすめしません。
Q. 保険診療で診てもらえますか?
歯ぎしりの原因確認・咬み合わせのチェック・定期健診は健康保険の範囲で対応しています。矯正治療が必要な場合は治療内容によって費用が異なりますので、カウンセリングで書面にてご案内します。受診の際は資格確認書(マイナカード)をお持ちください。
「歯の摩耗・朝の顎の痛み・口呼吸」の
3つを確認すれば受診すべきか判断できます
まとめ|東灘区・御影エリアの保護者の方へ
子どもの歯ぎしりについて、ポイントをまとめます。
- 子どもの歯ぎしりは多くの場合、発育過程の生理的な現象で「病気」ではない
- 乳歯列〜混合歯列期(0〜9歳ごろ)に最も多く見られ、生え変わりとともに落ち着くことが多い
- 歯の摩耗・朝の顎の痛み・口呼吸がある場合は歯科受診の目安
- 夜中に起こしたり、やめさせようとしたりする必要はなく、まず観察が大切
- 10歳以降も続く場合や咬み合わせの問題がある場合は専門的な確認を
- 子どもへの市販マウスピースの独断使用は控える
「音がするけど受診するほどでもないかな……」と迷っているなら、定期健診のついでに一言お伝えいただくだけで構いません。神戸市東灘区御影エリアで子どもの歯ぎしりが気になる保護者の方は、みかげ小児歯科・矯正歯科クリニックへお気軽にご相談ください。
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック
〒658-0048 兵庫県神戸市東灘区御影郡家1-34-9
阪神御影駅 徒歩約7分/阪急御影駅 徒歩約7分/JR住吉駅 徒歩約17分(駐車場あり)
緊急電話:050-1784-4369(緊急時のみ)
受診の際は資格確認書(マイナカード)をお持ちください。
参考文献・出典
- 日本小児歯科学会「子どもの歯と口の健康に関する情報」https://www.jspd.or.jp/
- 厚生労働省「e-ヘルスネット:歯ぎしり(ブラキシズム)」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
- American Academy of Pediatric Dentistry(AAPD)”Guideline on Acquired Temporomandibular Disorders in Infants, Children, and Adolescents”
- Manfredini D, et al. “Sleep bruxism in children: a review of the literature.” Int J Paediatr Dent. 2017.
監修者
河崎 真也(かわさき まさや)
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/医療法人茜会 理事長。日本歯科放射線学会 認定医・日本小児歯科学会 所属。専門は小児歯科・小児矯正・口腔機能育成。東灘区御影にて地域の子どもたちのお口の健康を長期的にサポートしています。
お子さまのお口のことで気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。




