【小児歯科医監修】癒合歯(ゆごうし)とは?乳歯がくっついて生える原因・永久歯への影響・むし歯予防のポイント|みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック|御影
2017年09月21日
執筆・監修:河崎 真也(みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/日本歯科放射線学会 認定医・日本小児歯科学会 所属)
最終更新日:2026年6月10日 / 初回公開:2017年
本記事は、2本の歯がくっついて生える「癒合歯」について、その原因・永久歯への影響・むし歯予防の注意点を、小児歯科の現場知見をもとに保護者の方向けにまとめた内容です。
「下の前歯が、2本くっついて1本のように生えている」――そんなお子さまの歯に気づいて、心配になって調べていらっしゃる保護者の方も多いのではないでしょうか。これは癒合歯(ゆごうし)と呼ばれる状態で、乳歯では決して珍しいものではありません。
癒合歯そのものは病気ではありませんが、くっついた部分のくぼみがむし歯になりやすいこと、そしてその下の永久歯に影響することがあることから、知っておいていただきたいポイントがあります。この記事では、癒合歯の原因と、生え変わりまでに気をつけたいことを、小児歯科医の立場でわかりやすくお伝えします。神戸市東灘区御影の当院でも、定期健診の際によくご相談をいただくテーマです。
目次
1. 癒合歯(ゆごうし)とは
癒合歯とは、本来2本に分かれて生えるはずの歯が、くっついて1本のように生えている状態のことです。よく見ると、歯の真ん中あたりに溝(くぼみ)があり、2本がつながっているのがわかります。
多くは下の前歯(乳前歯)に見られます。乳歯にはときどき起こるもので、それ自体が体に害を及ぼすわけではありません。ただし、見た目が1本に見えても中身は2本ぶんであることが多く、後ほどお伝えする永久歯への影響に注意が必要です。
2. どうしてくっついて生えるの?
歯は、あごの中で「歯の芽(歯胚・しはい)」から作られて育っていきます。癒合歯は、この歯の芽が作られる段階で、隣り合う2つが結びついてしまうことで起こると考えられています。
はっきりとした原因はまだ解明されていませんが、保護者の方の育て方や妊娠中の過ごし方が原因ではありません。「自分のせいかも」と心配される必要はまったくないものです。生まれつきの個性のひとつとして受けとめていただいて大丈夫です。
3. 永久歯への影響|先天欠如のリスク
癒合歯で最も注意したいのが、その下に控えている永久歯への影響です。
研究では、乳歯が癒合歯の場合、その後を引き継ぐ永久歯がもともと足りない(先天欠如・せんてんけつじょ)ケースが一定の割合で見られることが知られています。通常、前歯では乳歯1本に対して永久歯が1本ずつ控えていますが、乳歯の癒合歯では、本来2本ぶんに対して永久歯が1本しかない、ということが起こりえます。
ポイント:見た目だけでは永久歯がそろっているかどうかはわかりません。だからこそ、レントゲンで永久歯の有無を確認しておくことが、将来の歯並びを見通すうえで大切になります。
4. むし歯になりやすい理由と予防
癒合歯は、2本がくっついた境目に細い溝(くぼみ)ができます。この溝には食べかすやプラーク(歯垢)がたまりやすく、歯ブラシの毛先も届きにくいため、むし歯になりやすい場所です。
○ ご家庭でできる予防
- 仕上げみがきで溝をていねいに — 真ん中のくぼみに毛先を当て、左右に小さく動かして汚れをかき出します。
- フッ素を活用する — フッ素配合の歯みがき剤と、歯科でのフッ素塗布で歯質を強くします。
- 歯科でのシーラントを検討 — 溝が深い場合は、樹脂で溝を埋めてむし歯を予防する処置(シーラント)が有効なことがあります。
当院では、癒合歯のお子さまには定期健診のなかでブラッシングのコツをご案内し、必要に応じてフッ素塗布やシーラントをご提案しています。
5. 生え変わりのときに起こりやすいこと
癒合歯は、乳歯から永久歯への生え変わりのタイミングでトラブルが起こりやすいことがあります。
- 抜けるタイミングがずれる — 2本ぶんがつながっているため、根が吸収される時期がそろわず、なかなか抜けないことがあります。
- 永久歯が出る場所が変わる — 乳歯が自然に抜けにくいと、後ろから永久歯が生えてきてしまうことがあります。
- 抜歯が必要になる場合がある — 永久歯の生え方をそろえるために、タイミングを見て乳歯の抜歯を検討することがあります。
これらは「必ず起こる」ものではなく、起こりやすいので経過を見ておきましょうという意味です。永久歯が生え替わる時期が近づいたら、歯科で状態を確認していくと安心です。
6. レントゲンでの確認が大切な理由
前述のとおり、癒合歯の下では永久歯が足りないことがあります。これはレントゲン検査でしか確認できません。永久歯の本数や生えてくる向きを早めに把握しておくことで、生え変わりの計画を立てやすくなります。
もし永久歯が足りないとわかった場合でも、すぐに何かをするわけではありません。お子さまの成長に合わせて、歯並びやかみ合わせをどう整えていくかを、時間をかけて一緒に考えていけます。当院は院長が日本歯科放射線学会 認定医として、必要な検査を見極めながら、レントゲンの被ばくにも配慮した診療を行っています。
7. ご家庭で気をつけたいこと
- くっついた溝を意識して仕上げみがき — むし歯になりやすい場所を毎日ていねいに。
- 定期検診を続ける — むし歯チェックに加え、永久歯の生え変わりの経過を見守ります。
- 一度はレントゲンで永久歯を確認 — 先天欠如の有無を早めに把握しておくと安心です。
- あわてず見守る — 癒合歯は珍しくないもの。心配しすぎず、要所で歯科と相談しながら付き合っていきましょう。
まとめ
癒合歯は、乳歯ではときどき見られる、それ自体は心配のいらない状態です。ただし、くっついた溝はむし歯になりやすく、その下の永久歯が足りないことがあるという2点には注意が必要です。日々の仕上げみがきとフッ素で予防をしながら、一度レントゲンで永久歯を確認し、生え変わりの時期に経過を見ていく――この流れを押さえておけば安心です。
「うちの子の前歯がくっついている気がする」「永久歯がちゃんとあるのか心配」など、気になることがあれば、定期健診の際にいつでもご相談ください。お子さまの成長に合わせて、一緒に見守っていきます。
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参考文献・参考資料
- 全国歯科衛生士教育協議会 監修『歯科衛生学シリーズ 小児歯科学』(医歯薬出版、2023年)
- 一般社団法人 日本小児歯科学会
- 公益社団法人 日本歯科医師会
- 厚生労働省「歯の健康」
執筆・監修:河崎 真也(かわさき まさや)
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/医療法人茜会 理事長
専門:小児歯科/小児矯正/口腔機能育成
所属:日本歯科放射線学会 認定医、日本小児歯科学会
「明朗・愛和・喜働」を理念に、お子さまとご家族に寄り添った歯科医療を提供しています。
お子さまのお口のことで気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。




