【小児歯科医監修】中学生の歯列矯正と部活の両立|運動部・吹奏楽部で気をつけたいこと|みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック|御影
2026年08月11日
執筆・監修:河崎 真也(みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/日本歯科放射線学会 認定医・日本小児歯科学会 所属)
最終更新日:2026年8月11日 / 初回公開:2026年8月11日
中学生になってから歯並びの矯正を考えるとき、いちばんの心配ごとになりやすいのが部活との両立です。運動部・吹奏楽部それぞれで気をつけたいことと、通院の組み立て方を、神戸市東灘区御影の小児歯科・矯正歯科の視点でまとめました。
「中学生になって歯並びが気になりだしたけれど、部活があるので矯正は難しいでしょうか」「吹奏楽で金管楽器をやっています。装置をつけると吹けなくなると聞いて不安です」――東灘区/御影の当院でも、中学生のお子さまと保護者の方から、こうしたご相談をよくいただきます。小学生のころとちがって、本人の生活のなかに部活や塾がしっかり組み込まれている時期なので、治療のことだけを切り離して考えるわけにはいきません。
この記事では、中学生という時期のお口の特徴をふまえながら、運動部・吹奏楽部それぞれで気をつけたいこと、部活や塾と通院をどう組み立てていくか、そして装置がついている時期のお口のケアについて、小児歯科医の立場でお伝えします。あわせて、歯を並べることだけを目的にせず、噛む・飲み込むといったお口のはたらきを育てる「お口育て」の視点から、中学生の時期に大切にしたいことにも触れていきます。
目次
中学生という時期のお口の特徴
中学生の年代は、乳歯から永久歯への生えかわりがおおむね終わる時期にあたると考えられています。12歳ごろに生えてくる第二大臼歯までそろうと、歯並び全体の形がはっきり見えてくるため、どこにどれだけのスペースの不足があるのか、上下の噛み合わせがどうなっているのかを、あらためて全体として評価しやすくなるとされています。小学生のころは「これから生えかわるので変わるかもしれない」という前提がありましたが、中学生になるとその不確かさが小さくなっていきます。
一方で、顎の骨の成長はまだ続いている場合があるとされています。とくに下顎は身長の伸びと近い時期に成長が進むと考えられていて、成長の勢いが残っているかどうかは個人差が大きい部分です。ですから中学生の矯正は、「すべて生えそろった歯を並べる」という側面と、「まだ残っている成長を見ながら進める」という側面の両方をあわせて考えていくことになります。どちらの要素が強いかは、レントゲンや模型などをふまえて一人ひとり確認していきます。
そしてもうひとつ大きな特徴が、本人の意思で取り組めるようになることです。小さいお子さまの場合は保護者の方が装置の管理を担う場面が多いのですが、中学生になると、自分で装着時間を管理したり、自分で歯みがきの精度を上げたりできるようになっていきます。これは治療を進めるうえで大きな力になると考えられています。年齢と生えかわりから見た開始時期の考え方は、別記事「小児矯正はいつから?|年齢・生えかわりから考える開始時期」でくわしく整理しています。
「もっと早く始めたほうがよかった?」と思ったとき
中学生になってから矯正を考えはじめた保護者の方から、「もっと小さいうちに相談しておけばよかったのでしょうか」というお声をいただくことがあります。この気持ちはとても自然なものだと思います。ただ、私たちは、過ぎた時間を振り返って悔やむ必要はないとお伝えしています。歯並びが気になりはじめるきっかけは、本人が鏡を見て気づく、写真を見て気になる、部活の仲間との会話で意識するなど、その年齢になって初めて生まれることも多いからです。
当院では、成長を活かす早い時期からの関わりについては5歳ごろからご相談をお受けしています。早い時期には、顎の育ちやお口のはたらきに働きかけられる余地が大きいという利点があるとされています。とはいえ、それは「その時期を過ぎたら手立てがない」という意味ではありません。中学生の年代には、歯の位置を整えるという点でむしろ条件が整っている面もあり、本人が理解して主体的に取り組めるという強みも加わります。時期ごとに、できることの中身が変わっていくと考えていただくのがよいと思います。
なお、小児矯正には成長期に顎やお口のはたらきに働きかける段階と、生えそろった歯を整えていく段階があり、中学生はおおむね後者にあたる年代とされています。それぞれの段階で何をしていくのか、どんな装置が使われるのかという全体像は、別記事「子どもの歯列矯正の流れ|1期・2期治療と使われる装置の種類」でまとめていますので、あわせてご覧ください。この記事では、そのうえで「部活との両立」という具体的な悩みに絞ってお話ししていきます。
装置のタイプと部活へのかかわり方
部活との両立を考えるうえで、まず知っておいていただきたいのが、装置には大きく「固定式」と「取り外し式」があるという点です。固定式は歯の表面に装置をつけて、治療期間中はご自身で外さないタイプです。取り外し式は、マウスピース型の透明な素材の装置などのように、食事や歯みがきのときに自分で外して、それ以外の時間は装着しておくタイプです。この二つは、部活の場面での扱い方がかなり変わってきます。
固定式の場合は、外し忘れや紛失の心配がない一方で、装置の表面に汚れが残りやすくなり、口の中に当たって違和感が出ることがあるとされています。取り外し式の場合は、必要な場面で外せる自由度がありますが、決められた時間しっかり装着できているかが結果に関わってくると考えられています。部活で忙しく、外した装置をそのままケースに入れ忘れてしまう、というつまずきも起こりやすい部分です。どちらにも向き不向きがあり、一概にどちらがよいとは言えません。
ですから当院では、「どの装置がおすすめですか」というご質問に対して、はじめから一つの答えをお示しすることはしていません。歯並びと噛み合わせの状態、顎の成長がどれだけ残っているか、そして部活の種目や練習の頻度、通院できる時間帯といった生活面をあわせてうかがったうえで、ご相談のなかで決めていきます。見た目の目立ちにくさという観点での装置のちがいは、別記事「目立たない小児矯正|装置の種類と見た目の特徴」でくわしくご紹介しています。
運動部で気をつけたいこと
運動部に所属している場合、まず確認しておきたいのが、その競技に相手や道具との接触の可能性があるかどうかです。ボールや体が顔に当たる場面がある競技では、口元を守る配慮が必要になると考えられています。固定式の装置がついている状態で強い衝撃を受けると、唇や口の中の粘膜を傷つけることがあるとされているためです。競技用の口元の保護具を使うかどうか、使う場合はどういう形のものを選ぶかは、装置の状態とあわせてご相談のうえ決めていきます。
取り外し式の装置を使っている場合は、「練習や試合のあいだ、装置をどう扱うか」をあらかじめ決めておくことが大切です。外して練習に臨むのか、つけたまま行うのかは、競技の内容と装置の種類によって変わります。外す場合に気をつけたいのは紛失です。ティッシュに包んで置いておく、ポケットに入れておくといった扱いは、そのまま失くしてしまう原因になりやすいとされています。専用のケースを部活バッグに常備し、外したらすぐにケースへ入れる習慣をつくっておくと安心です。
練習後のケアも見落としがちな部分です。激しい運動のあとは疲れて帰宅し、そのまま眠ってしまうこともあると思います。ただ、運動中は口で呼吸することが増えて口の中が乾きやすくなり、汚れが残ったままになると歯ぐきや歯にとって負担がかかりやすい状態になると考えられています。スポーツドリンクを少しずつ長い時間かけて飲む習慣も、お口の中が酸性に傾いた状態が続きやすくなるとされています。飲んだあとに水を口に含む、練習後は短時間でも歯をみがく、といった小さな工夫を積み重ねていただくとよいでしょう。
吹奏楽部で気をつけたいこと
吹奏楽部の場合、心配されるのはやはり演奏への影響です。とくにトランペットやホルンなどのように楽器のマウスピースを唇に当てて音を出す金管楽器では、唇や前歯のあたりの感覚が演奏に関わってくるため、装置がつくことで口元の感覚が変わったように感じられることがあるとされています。木管楽器でもリードをくわえる位置の感覚が変わることがあり、フルートのように唇の形で息を当てる楽器でも同様の話が聞かれます。
ただ、これは「楽器が吹けなくなる」ということではありません。感覚の変化に慣れるまでにしばらく時間がかかる場合があると考えられていて、どのくらいで慣れていくかには個人差があります。慣れ方には、装置の種類や、口元のどのあたりに装置があるかも関わってくるとされています。取り外し式の装置であれば、演奏の場面と装着の時間をどう組み立てるかという選択肢も出てきます。大会やコンクールなど大事な予定がある場合は、その時期を見越して進め方を組めるよう、あらかじめ教えていただけると助かります。
実際に取り組むうえでおすすめしているのは、顧問の先生や指導者の方に、矯正を始めることを早めに共有しておくことです。吹奏楽の指導に長く関わっている方であれば、同じ経験をした生徒さんを見てこられていることも多く、練習の組み立てや音の出し方について助言をいただけることがあります。本人だけが抱え込んで「うまく吹けないのは自分のせいだ」と感じてしまうことを避けられる点でも、周囲に伝えておくことには意味があると考えています。
部活・塾と通院を両立させる工夫
中学生の矯正で現実的にいちばん難しいのは、装置そのものよりも通院時間の確保だという印象があります。平日は放課後に部活があり、そのあと塾に通っているというお子さまも少なくありません。土日も練習や試合が入ることがあります。ですから治療を始める前に、「どのくらいの間隔で、どのくらいの時間の来院が必要になりそうか」を確認しておくことをおすすめしています。見通しが立っていれば、部活のスケジュールと重ねて計画しやすくなります。
具体的な工夫としてよく挙がるのが、長期休みの活用です。春休み・夏休み・冬休みは部活の予定も平日と異なることが多く、検査や説明といった時間のかかる場面をこの時期にあてておくと、学期中の負担を抑えやすくなります。治療を始めるタイミング自体を長期休みに合わせるという考え方もあります。装置に慣れるまでの期間を、比較的余裕のある時期に置いておけるという利点があるためです。
治療にかかる期間については、歯並びの状態や成長の残り具合、装置の使い方によって大きく変わるため、「何年で終わります」と一律にお伝えすることはできません。個人差があるとお考えください。そのうえで、部活の引退時期や受験のスケジュールといった生活の節目をうかがいながら、どこにどの段階を置くのが無理がないかを一緒に組み立てていきます。予定が変わったときも、そのつど相談しながら調整していける進め方を大切にしています。
装置がついている時期のお口のケア|思春期の歯ぐき
装置がついていると、歯の表面や装置のまわりに汚れが残りやすくなると考えられています。歯ブラシの毛先が届きにくい場所が増えるためで、いつもと同じみがき方では足りなくなることが多いとされています。装置のまわりを小さく分けてみがく、毛先の細いものや小さめのブラシを併用する、鏡を見ながら残りやすいところを確認するといった工夫が役立ちます。当院では、装置を入れたあとに、その方の装置に合わせたみがき方をご案内しています。
加えて中学生の年代は、思春期にあたるためホルモンの変化の影響を受けて、歯ぐきが汚れに反応しやすくなる時期とも言われています。同じくらいの汚れでも歯ぐきが赤く腫れやすい、みがくと血がにじむ、といった様子が出やすくなるとされています。装置がつく時期とこの時期が重なることが多いため、歯ぐきの状態はとくに気をつけてみていきたい部分です。思春期のお口のケアについては、別記事「小学校高学年の歯|生えかわり完了期のケアと思春期の歯肉炎」でくわしくご紹介しています。
歯ぐきが腫れている状態が続くと、装置による歯の動きを確認しにくくなることもあると考えられています。歯ぐきの赤みや腫れ、出血が気になるときは、次の来院を待たずにご相談いただいて構いません。歯ぐきの腫れについての見方と受診の目安は、別記事「子どもの歯肉炎・歯ぐきの腫れ|見分け方と受診の目安」でまとめています。矯正中は通院の機会が定期的にありますので、そのたびに汚れの残り方と歯ぐきの状態を確認していけるという利点もあります。
本人が納得して取り組むために|お口育ての視点から
中学生の矯正で結果に大きく関わるのは、本人が納得して取り組めているかどうかだと考えています。取り外し式であれば装着時間、固定式であれば毎日のケアと、どちらにしても本人の手にかかる部分が残ります。保護者の方が心配して勧めた形で始まると、部活で疲れた日に「なんで自分がこれをやっているのか」という気持ちが出てきやすくなります。ですから当院では、中学生ご本人にも直接ご説明し、いまのお口の状態と、これから何をしていくのかを本人の言葉で理解していただくことを大切にしています。
そのうえで、私たちが歯並びを整えることだけを目的にしていない点もお伝えしています。当院は、歯を並べることに加えて、噛む・飲み込む・呼吸するといったお口のはたらきを育てていく「お口育て」の視点を大切にしています。しっかり噛んで食べているか、飲み込むときに舌がどう動いているか、日中お口が開いたままになっていないかといったところは、整えた歯並びをその後どう保っていけるかにも関わると考えられています。中学生の年代でも、これらは意識して育てていける部分です。
部活に打ち込んでいる時期は、体づくりや食事にも関心が向きやすいタイミングです。よく噛んで食べる、お口を閉じて鼻で呼吸する、といった話は、健康や運動のパフォーマンスとつながる話として本人にも届きやすいと感じています。東灘区/御影の当院では、こうしたお口のはたらきの話も含めて、中学生ご本人と保護者の方の両方にご相談いただける形をとっています。部活と両立できるかどうか迷っている段階でも、遠慮なくおたずねください。
よくあるご質問
Q1. 部活を続けながら矯正はできますか?
A. 部活を続けながら取り組んでいる中学生は少なくありません。ただし、競技の内容や練習の頻度によって気をつけたい点が変わってきます。接触の可能性がある競技では口元を守る配慮を考え、取り外し式の装置なら練習中の扱いをあらかじめ決めておきます。どんな部活で、どのくらいの頻度で活動しているかをうかがったうえで、無理のない進め方をご相談します。
Q2. 吹奏楽部です。装置をつけると楽器が吹けなくなりますか?
A. 吹けなくなるということではありません。マウスピースを唇に当てる金管楽器などでは口元の感覚が変わったように感じられることがあるとされていて、慣れるまでに時間がかかる場合があります。慣れ方には個人差があります。大会やコンクールの予定を早めに教えていただければ、その時期を見越して進め方を組みやすくなります。顧問の先生に共有しておくこともおすすめしています。
Q3. 中学生から始めるのは遅いのでしょうか?
A. 遅すぎるということはありません。当院では、成長を活かす早い時期からの関わりは5歳ごろからご相談をお受けしていますが、中学生の年代には歯が生えそろっていて全体を評価しやすいという利点や、本人が理解して主体的に取り組めるという強みがあります。時期によってできることの中身が変わると考えていただくのがよいと思います。
Q4. 部活と塾が忙しく、通院の時間がとれそうにありません。
A. まず、どのくらいの間隔で来院が必要になりそうかを事前にご確認ください。見通しが立てば、部活の予定と重ねて計画しやすくなります。検査や説明など時間のかかる場面を春休み・夏休み・冬休みにあてる、治療を始めるタイミング自体を長期休みに合わせるといった工夫もあります。ご家庭の事情をうかがいながら組み立てますので、ご相談ください。
Q5. 装置をつけると、むし歯や歯ぐきの炎症が心配です。
A. 装置のまわりは汚れが残りやすくなると考えられています。加えて中学生は思春期にあたり、歯ぐきが汚れに反応しやすい時期とも言われています。当院では装置に合わせたみがき方をご案内し、通院のたびに汚れの残り方と歯ぐきの状態を確認していきます。腫れや出血が気になるときは、次の来院を待たずにご相談いただいて構いません。
📌 部活をあきらめる前に、一度ご相談ください
部活の種目・練習の頻度・通える時間帯をうかがったうえで、進め方をご相談します。
お口の状態と生活の両方を見ながら、本人が続けられる形を一緒に考えていきます。
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック
📍 〒658-0048 神戸市東灘区御影郡家1-34-9
📞 050-1784-4369(診療時間内のみ)
🚉 阪急「御影駅」より徒歩約7分/阪神「御影駅」より徒歩約11分/JR神戸線「住吉駅」より徒歩約13分(お子さま連れの場合は15〜20分程度)
関連記事
参考文献・参考資料
- 全国歯科衛生士教育協議会 監修『歯科衛生学シリーズ 小児歯科学』(医歯薬出版、2023年)
- 一般社団法人 日本小児歯科学会
- 公益社団法人 日本矯正歯科学会
- 厚生労働省「e-ヘルスネット(歯・口の健康)」
執筆・監修:河崎 真也(かわさき まさや)
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/医療法人茜会 理事長
専門:小児歯科/小児矯正/口腔機能育成
所属:日本歯科放射線学会 認定医、日本小児歯科学会
神戸市東灘区御影で、乳幼児期からのお口の健康とお口の機能(お口育て)の視点を大切に、お子さまの成長を見守る歯科医療を行っています。「明朗・愛和・喜働」を理念に、ご家族に寄り添った診療を心がけています。
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【小児歯科医監修】早食い・丸呑みする子どもへの対応|噛む力を育てる家庭での工夫と歯科のサポート|みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック|御影
2026年08月10日
執筆・監修:河崎 真也(みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/日本歯科放射線学会 認定医・日本小児歯科学会 所属)
最終更新日:2026年8月10日 / 初回公開:2026年8月10日
食事の時間が短く、よく噛まずに飲み込んでしまうお子さまについて、背景として考えられることと、ご家庭でできる具体的な工夫、歯科でのサポートを、神戸市東灘区御影の小児歯科の視点でまとめました。
「ごはんをあっという間に食べ終わってしまう」「ほとんど噛まずに飲み込んでいるように見える」――東灘区/御影の当院でも、こうしたご相談をよくいただきます。食卓で「よく噛んでね」と声をかけ続けているのに変わらない、と疲れてしまわれている保護者の方も少なくありません。
早食いや丸呑みは、お子さまの性格や食べ方の癖だけで決まるものではないと考えられています。この記事では、なぜそうなるのかという背景、ご家庭でできる段階的な工夫、そして歯科でのサポートを順に整理します。噛む・飲み込むといったお口のはたらきを育てる「お口育て」の視点からもお伝えしていきます。
目次
なぜ早食い・丸呑みになるのでしょうか
早食いや丸呑みの背景は、ひとつに限られないと考えられています。食べ物のかたさや大きさがそのお子さまの今の噛む力と合っていないこと、一口に入れる量が多いこと、飲み物で流し込む習慣、歯の生え方や噛み合わせの状態、お口まわりの筋肉の使い方、食事の時間や環境、そして座ったときの姿勢――こうした要素がいくつも重なっていることが多いとされています。
「よく噛んでね」という声かけだけでは変わりにくいのは、噛むという動作が思っているより複雑だからです。唇を閉じる、舌で食べ物を奥歯へ運ぶ、奥歯で押しつぶしてすりつぶす、唾液と混ぜてまとめる、そして飲み込む――この一連の流れがつながって初めて「よく噛んで食べる」が成り立つと考えられています。どこかの動きがまだ育ちきっていないと、飲み込みやすい形になる前に先へ進んでしまうことがあります。
ですから出発点は、叱ることではなく「どこでつまずいているのかを見つけること」だと考えています。よく噛むことが顎の育ちや歯並びにどう関わるのかという原理そのものについては、別記事「子どもの顎(あご)の発達|よく噛むことの大切さと歯並びへの影響」で解説しています。この記事では、目の前の困りごとにどう手を打つかに絞ってお話しします。
一口の量とかたさが合っていないとき
よく見られるのが、一口に入れる量が多いというパターンです。口の中がいっぱいになると、舌で食べ物を動かす余裕がなくなり、奥歯へ運んですりつぶす動きがしにくくなると考えられています。結果として、噛みきれていないものを押し込むように飲み込む形になりやすくなります。お腹が空いているときや、次に食べたいものが待っているときにも起こりやすい様子です。
食べ物のかたさも関わります。やわらかく調理されたものばかりだと、そもそも噛む必要が少なく、噛まずに飲み込めてしまいます。反対に、今の噛む力に対してかたすぎるものは、噛みきれないまま丸呑みにつながることがあるとされています。目安としては「そのお子さまが噛めば処理できるけれど、少し手応えがある」あたりがちょうどよいと考えられています。
ここで大切なのは、噛む力を育てようとして急にかたいものを増やすのは、かえって逆効果になりうるという点です。噛みきれない経験が続くと、食べること自体を負担に感じてしまうこともあります。かたさや大きさは、お子さまの様子を見ながら少しずつ段階的に上げていくのが基本と考えられています。
飲み物で流し込む癖がついているとき
食事のあいだにお茶や水をたくさん飲むお子さまでは、噛みきれていないものを飲み物と一緒に流し込めてしまうことがあります。飲み込みやすくなるぶん、噛む回数は自然と減っていくと考えられています。コップが手の届くところに常に置かれている食卓では、この流れが習慣として定着しやすい傾向があります。
工夫としては、飲み物を食事の前後や、食べ進んでひと区切りついたタイミングに分けて出すという方法があります。食卓に出しっぱなしにせず、大人が渡す形にするだけでも回数は変わってきます。ただし、水分がないとむせやすい、お口が乾きやすいといった様子があるお子さまでは、飲み物が助けになっている場合もあります。一律に減らすのではなく、様子を見ながら調整していただくのがよいと考えています。
なお、飲み込む力や飲み方そのものについては、コップ飲みの育ちという別の切り口があります。ストローとコップの使い分けや、飲み込む動きの育て方は「ストロー飲みは急がなくて大丈夫|コップ飲みで「お口育て」」でくわしくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
歯の生え方・噛み合わせが関わることもあります
噛むという動きは歯を使って行うものですから、歯の状態が影響することもあります。奥歯がまだ生えそろっていない時期、生えかわりの時期で歯がぐらぐらしている時期、抜けたあとの隙間があってすりつぶしにくい時期などは、うまく噛めないまま飲み込みやすくなると考えられています。左右のどちらか片側だけで噛んでいる場合も同様です。
前歯の噛み合わせも関わります。前歯でうまく噛みとれないと、大きなかたまりのまま口に入ることになり、奥歯での処理が追いつきにくくなることがあるとされています。また、食事中にお口が開いたままになりやすいお子さまでは、唇を閉じて噛む動きが取りにくい場合もあります。お口が開いたままになりやすい背景については「お口ぽかんと口呼吸|子どもの「お口が開いている」が気になるとき」で扱っています。
もうひとつ見落としたくないのが、痛みや違和感があって噛むのを避けている場合です。むし歯や歯ぐきの炎症、生えかけの歯のあたりの不快感があると、そこを使わないようにして急いで飲み込むことがあります。「最近急に食べ方が変わった」というときは、一度歯科でお口の中を確認していただくと原因が絞りやすくなります。
食事の環境と姿勢を見直してみる
食事の環境も、食べる速さに関わると考えられています。登園・登校前や習い事の前など、時間に追われている食事では、大人もお子さまも急ぐことになります。テレビや動画がついている、きょうだいと競うように食べている、といった場面でも、噛むことに意識が向きにくくなります。これはご家庭の落ち度ではなく、忙しい日常でどうしても起こることです。少し余裕のある食事の回を意識的につくる、というくらいの考え方でよいと思います。
姿勢も見ていただきたいポイントです。椅子に座ったときに足が床や足台に届いていないと、体が不安定になり、噛むときに力を入れにくくなると考えられています。足がぶらぶらしている状態では、体を支えることに力が使われてしまうという見方もあります。足がしっかりつく高さの椅子や足台を用意し、テーブルとの高さのバランスを整えるだけでも、食べ方が落ち着いてくるお子さまがいます。
そして、いちばん効きやすいのは「一緒に食べる」ことだと考えています。家族が同じテーブルでゆっくり噛んで食べている様子は、言葉での注意よりも伝わりやすいものです。大人が口を閉じてよく噛む姿を見せる、「これは噛みごたえがあるね」と食べ物の感じを言葉にしてみる。そうしたやりとりの積み重ねが、噛むことへの関心につながっていくとされています。
ご家庭でできる工夫|噛む力は段階的に
まず取り組みやすいのが、一口の量を減らす工夫です。スプーンを小さめのものに替える、お皿に少しずつ盛る、ひと口ずつ手渡すといった方法があります。また、細かく切りすぎず、あえて大きめに切って前歯で噛みとってもらうことで、噛みとる・奥歯へ運ぶという動きの練習になると考えられています。すべてを一口大にそろえてしまうと、この機会が減ってしまいます。
噛みごたえのある食材は、段階を踏んで取り入れていきます。加熱時間を少し短くして歯ごたえを残す、根菜やきのこを少し大きめに切る、繊維の向きを変えて切ってみる、といった小さな調整から始めるとよいと考えられています。いきなり献立全体を変えるのではなく、一品だけ噛みごたえのあるものを添えるところからでも十分です。うまく噛めた場面があれば、そこを言葉にして伝えてあげてください。
おやつの時間も、噛む練習の機会になります。やわらかくて口の中で溶けるようなものが続くと噛む場面が減りますが、噛みごたえのあるものを選ぶことで、無理なく回数を増やせると考えられています。おやつの選び方や出し方については「子どものおやつの選び方|むし歯になりにくい選び方とタイミング」でご紹介していますので、参考にしていただければと思います。
「お口育て」の視点から見た噛む・飲み込む
当院では「お口育て」という考え方を大切にしています。噛む・飲み込む・話すといったお口のはたらきを、乳幼児期から成長にあわせて育てていくという視点です。歯を守ることと同じくらい、お口が上手にはたらくようになることに意味があると考えています。考え方の全体像は「「お口育て」とは?|乳幼児期から育てる噛む・飲み込む・話す力」でまとめています。
この視点で見ると、早食いや丸呑みは「直すべき悪い癖」ではなく、「お口のはたらきがまだ育っている途中のサイン」として受け取ることができます。よく噛むことは、唾液がしっかり出ること、味を感じること、食べたという満足感を得ることにもつながると考えられています。お口を閉じて噛むことができるようになると、こうしたはたらきが活きやすくなるとされています。
ご家庭で意識していただきたいのは、「できていないところを直す」より「うまく使えている場面を増やす」という向き合い方です。早食いや丸呑みは、保護者の方の関わり方が原因で起きるものではありません。うまく噛めた日、ゆっくり食べられた食事があれば、それを一緒に喜ぶ。そうした積み重ねのほうが、長い目で見て変化につながりやすいと考えています。
歯科でできるサポート|噛み方・飲み込み方の確認
歯科では、お口の中を見るだけでなく、噛み方や飲み込み方そのものを確認していきます。奥歯が生えそろっているか、噛み合わせはどうか、左右のどちらかに偏っていないか、唇を閉じて噛めているか、舌がどう動いているか。そうした点を実際に見ていくことで、そのお子さまがどこでつまずいているのかが見えやすくなると考えています。
お口まわりの筋肉の使い方を育てていく関わりとしては、口腔筋機能療法(MFT)と呼ばれる考え方もあります。その内容については「MFT(口腔筋機能療法)とは?|お口まわりの筋肉のトレーニング」でご紹介しています。ただし、こうしたトレーニングはどのお子さまにも同じように当てはまるものではなく、状態に応じて役立つと考えられているものです。まずは今の様子を確認したうえで、そのお子さまに合った工夫をご提案していきます。
そして、大切なのは経過を見ていくことです。食べ方は歯の生えかわりや成長にあわせて変わっていきますから、一度の確認で終わらせず、間隔を決めて様子を追っていきます。東灘区/御影の当院では、定期的な受診の中で、むし歯の確認とあわせてお口のはたらきの育ちも見ていくようにしています。食事のことは相談しづらいと感じられる方もいらっしゃいますが、小さなことでもおたずねください。
よくあるご質問
Q1. 早食いは成長すれば自然に落ち着きますか?
A. 歯が生えそろい、噛む力が育つにつれて落ち着いてくるお子さまもいらっしゃいます。一方で、一口の量や飲み物で流し込む習慣が定着していると、そのまま続くこともあると考えられています。成長を待つだけでなく、食卓での工夫を少しずつ試していただくとよいと思います。
Q2. 「よく噛んで」と声をかけても変わりません。どうすればよいですか?
A. 声かけだけでは変わりにくいことが多いとされています。一口の量を減らす、飲み物のタイミングを分ける、足がつく椅子にする、といった環境側の調整のほうが効きやすいと考えられています。回数を数えて言い聞かせるのではなく、よく噛むことを意識できる場面をつくる形をおすすめしています。
Q3. かたい物を食べさせれば噛む力は育ちますか?
A. 急にかたい物を増やすのは、かえって丸呑みや食べることへの負担につながる場合があります。今の噛む力で処理できて、少し手応えがあるくらいから、段階的に上げていくのがよいと考えられています。かたさよりも、噛みとる・すりつぶすという動きが起こる形かどうかを意識してみてください。
Q4. 丸呑みが続くと、体の面で気をつけることはありますか?
A. 大きなかたまりのまま飲み込む食べ方では、のどに詰まりやすい食材に注意が必要と考えられています。丸くてつるっとしたもの、粘りのあるものなどは、大きさを調整し、落ち着いて食べられる場面で出していただくと安心です。心配な様子が続くときは、かかりつけの小児科や歯科でご相談ください。
Q5. 何歳から歯科で相談できますか?
A. 食べ方のご相談は、年齢を問わずおうかがいしています。乳歯が生えそろう時期、生えかわりが始まる時期など、食べ方が変わりやすいタイミングでのご相談も多くあります。むし歯の確認やフッ素塗布のついでに、気になる様子をお話しいただく形でも構いません。
📌 早食い・丸呑みは、育ち途中のサインです
叱って直すものではなく、環境と食べ物の調整で変わっていくものと考えています。
そのお子さまがどこでつまずいているのかを一緒に見つけ、できる工夫からご案内します。
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック
📍 〒658-0048 神戸市東灘区御影郡家1-34-9
📞 050-1784-4369(診療時間内のみ)
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関連記事
参考文献・参考資料
- 全国歯科衛生士教育協議会 監修『歯科衛生学シリーズ 小児歯科学』(医歯薬出版、2023年)
- 一般社団法人 日本小児歯科学会
- 日本歯科医学会「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方」
- 厚生労働省「e-ヘルスネット(歯・口の健康)」
執筆・監修:河崎 真也(かわさき まさや)
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/医療法人茜会 理事長
専門:小児歯科/小児矯正/口腔機能育成
所属:日本歯科放射線学会 認定医、日本小児歯科学会
神戸市東灘区御影で、乳幼児期からのお口の健康とお口の機能(お口育て)の視点を大切に、お子さまの成長を見守る歯科医療を行っています。「明朗・愛和・喜働」を理念に、ご家族に寄り添った診療を心がけています。
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【小児歯科医監修】長期休みに歯科受診をおすすめする3つの理由|春休み・夏休み・冬休みの使い方|みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック|御影
2026年08月9日
執筆・監修:河崎 真也(みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/日本歯科放射線学会 認定医・日本小児歯科学会 所属)
最終更新日:2026年8月9日 / 初回公開:2026年8月9日
春休み・夏休み・冬休みは、ふだんは動かしにくいお子さまの通院予定を組みやすい時期です。長期休みに歯科受診をおすすめしている理由を三つに整理し、休みの使い方を神戸市東灘区御影の小児歯科の視点でまとめました。
「夏休みのうちに歯科に連れて行ったほうがよいでしょうか」「春休みに健診を受けさせたいのですが、どのくらい前に相談すればいいですか」――東灘区/御影の当院でも、長期休みが近づくとこうしたご相談が増えていきます。学校や園がお休みの期間は、平日の日中も含めて予定を組みやすくなるため、それまで後回しになっていたことに手をつけやすいタイミングだと感じておられる方が多いようです。
この記事では、春休み・夏休み・冬休みといった長期休みに歯科受診をおすすめしている理由を、三つに整理してお伝えします。あわせて、休みの過ごし方がお口の環境に関わると考えられている点や、休みの間だからこそ見直しやすい「お口育て」の視点もご紹介します。予防処置や治療の内容そのものの解説ではなく、「時間が取れるタイミングをどう活かすか」という時期の話としてお読みいただければと思います。
目次
長期休みが歯科受診に向いているのはなぜ?
お子さまの歯科受診は、内容そのものよりも「いつ行くか」で進めやすさが変わることがあります。学校や園がある時期は、放課後の限られた時間に習い事や宿題が重なり、通院の予定を入れる余地が小さくなりがちです。結果として、気になっていたことが少しずつ先に延びてしまう、というお話をよくうかがいます。
その点、春休み・夏休み・冬休みといった長期休みは、時間の使い方をご家庭で組み立てやすい期間です。平日の日中に来院できる日があること、続けて通う日程を先に押さえられること、そしてお子さま自身が疲れていない状態で来られること――この三つがそろいやすいことが、長期休みをおすすめしている理由だと考えています。
なお、長期休みだけが受診のタイミングというわけではありません。定期的にみていくこと自体は、季節を問わず続けていただくものです。年齢に応じた通い方の目安は「子どもの定期健診・フッ素塗布・予防歯科まとめ」でご紹介していますので、あわせてご覧ください。この記事では、そのなかで長期休みという期間をどう活かすかに焦点をあててお話しします。
理由1|通院の時間に余裕がある
ひとつめの理由は、時間の余裕です。お子さまのお口の状態によっては、一度で終わらず何回かに分けて進めるほうがよい場合があります。小さなお子さまは長い時間じっと座っていることが難しいため、一回あたりを短くして回数を分けたほうが、負担が少なく進みやすいと考えられています。
学校や園がある時期は、次の予約が二週間後、三週間後と離れてしまうこともあります。長期休みの間であれば、間隔を詰めて日程を組みやすくなるため、区切りのよいところまで一気に進めやすくなります。途中で間があくと、お子さまが緊張のしかたを思い出してしまうこともあるため、続けて通えることには意味があると感じています。
もうひとつは、学校や園を休ませずに済むという点です。授業や行事を気にせず来院できることは、保護者の方にとってもお子さまにとっても負担が軽くなります。早退して来院すると、お子さまが「歯科のせいで抜けた」と感じてしまうこともあります。休みの日に落ち着いて来られることは、歯科への印象という面でもプラスにはたらくと考えています。
ただし、海外にお住まいで一時帰国のあいだに受診されるご家庭は、事情が逆になります。滞在できる期間が決まっているため、間隔をあけるのではなく、限られた期間のなかに詰めて組む必要があります。当院では、滞在の予定が決まっている場合はその期間内で終えられるよう日程を調整しますので、ご予約の際に帰国日と出発日をお知らせください。ごきょうだいまとめてのご予約も承っています。
とくに、抜歯などの外科的な処置を行う場合は、ご出発の前に一度確認の来院を組んでいただくようにしています。処置のあとの治り具合を出発前に確認できると安心ですし、渡航先で対応を探す負担も避けられます。滞在が短いときほど、最初のご相談の時点で全体の見通しを立てておくことが大切になります。
理由2|生活リズムが変わりやすい時期だから
ふたつめの理由は、長期休みがお口の環境にとって変化の起きやすい期間だとされていることです。休みの間は、決まった時間割から離れるぶん、おやつの回数が増えたり、就寝時刻が遅くなったりしやすくなります。旅行や帰省が入ると、いつもの歯みがきの流れが崩れることもあります。
甘い物については、一度に食べる量よりも、口に入る回数と時間が関わると考えられています。だらだらと長く食べ続けたり、ジュースを少しずつ飲み続けたりすると、お口の中が酸性に傾いた状態が続きやすいとされています。休みの間はこうした食べ方になりやすいため、休みに入る前と明けたあとに状態を確認しておくことに意味があると考えています。
また、みがき残しが続くと歯ぐきに軽い赤みや腫れが出ることがあるとされています。お子さまの歯ぐきの変化については「子どもの歯肉炎・歯ぐきの腫れ」でくわしくご紹介しています。休みの前後で歯ぐきの色を見くらべておくと、ケアの届き具合を振り返る手がかりになります。
理由3|お子さまの心に余裕がある
三つめの理由は、お子さまの気持ちの面です。学校や園から帰ったあとの時間帯は、体も気持ちも疲れが出やすいころです。その状態で初めての場所に行くと、ふだんなら乗り越えられることでも不安が大きくなってしまうことがあると考えられています。
当院では、初めてのお子さまにいきなり治療から入ることはせず、椅子に座ってみる、お口を見せてみる、器具の音を聞いてみるといった段階から少しずつ慣れていただく進め方を大切にしています。この「慣れる練習」は、時間に追われていないときのほうが進めやすいとされています。長期休みは、その練習にあてやすい期間です。
保護者の方にとっても、急いでいないことは大きな違いになります。次の予定が迫っているとどうしても言葉が急かす方向になりがちですが、余裕があれば待ってあげられます。お子さまが自分のペースで一歩進めた経験は、その後の受診のしやすさにつながっていくと考えています。歯科を嫌いにならずに通えるようになることは、長い目で見て大きな財産だと思っています。
学校健診で指摘を受けたときの対応タイミング
学校の歯科検診は、多くの学校で年度のはじめから初夏にかけて行われています。用紙を持ち帰ってきて、そこに記号や短い言葉で気になる点が書かれていた、という経験をお持ちの方も多いと思います。そして、その用紙を見た時期から少し間があいて、夏休みが来るという流れになりがちです。
そのため、学校健診で指摘があった場合、夏休みが対応のタイミングになりやすいと考えられています。学期中に受診できていればそれがいちばんですが、予定が合わずに持ち越してしまった場合も、休みの間に落ち着いて確認していただければと思います。用紙をお持ちいただくと、どの項目についての指摘だったかを共有しやすくなります。
記号の意味や、指摘を受けたあとにどう読み取ればよいかについては「歯科検診の結果の見方|C・CO・G・GOなどの記号とその後の対応」で整理しています。用紙の言葉だけでは判断が難しいことも多いため、迷われたときは記事をご覧いただいたうえで、歯科で実際にみてもらうのがよいと考えられています。
春休み・夏休み・冬休み、それぞれの使い方
春休みは、進級や進学をはさむ時期です。新しい学年が始まると生活のリズムが変わり、しばらくは通院の予定を組みにくくなることがあります。学年が上がる前にいまの状態を確認しておくと、その年をどう見ていくかの見通しが立てやすくなります。生えかわりが進む時期のお子さまでは、春の時点で永久歯の生え具合をみておくことも参考になります。
夏休みは、期間が長いことがいちばんの特徴です。何回かに分けて進める必要がある場合でも、休みの前半のうちに始めておけば、休みの間に区切りのよいところまで進めやすくなります。奥歯の溝を埋めるシーラントのように、生えたタイミングを見て考えるものについても、時間のあるうちに相談しておくと選びやすくなります。シーラントとフッ素の考え方は「シーラントとフッ素の使い分け」でご紹介しています。
冬休みは期間が短いぶん、目的を絞って使うのが現実的です。年末年始は行事が続き、甘い物やお菓子が身近にある日が増えやすい時期でもあります。休みに入る前に一度みておく、あるいは年明けに状態を確認しておく、といった使い方が向いていると考えています。短い休みでも、一年の締めくくりとして確認しておく意味はあると思います。
休みの間に見直したいこと|お口育ての視点から
長期休みには、受診とは別に、ご家庭でこそ見直しやすいことがあります。それは、食べ方や噛み方といったお口のはたらきです。当院では、噛む・飲み込む・話すといったお口のはたらきを成長にあわせて育てていく考え方を「お口育て」と呼んでお伝えしています。考え方の全体像は「「お口育て」とは?」でまとめています。
ふだんの平日は、朝も夕方もお子さまの食事をゆっくり見ていられる余裕がないことが多いと思います。長期休みは、そこをじっくり観察できる期間です。よく噛んでから飲み込んでいるか、お口を閉じて食べられているか、片側だけで噛んでいないか、飲み物で流し込んでいないか――こうした点は、見ようと思って見ないと気づきにくいものです。
気になる様子があれば、休み中の受診のときにそのままお話しいただければと思います。歯みがきの届いていない場所の見直しや、フッ素の活かし方といったご家庭のケアの部分もあわせてご相談いただけます。フッ素そのものの考え方については「子どものフッ素はなぜむし歯予防に効くの?」でくわしくご紹介しています。
混み合う時期の予約と、休み明けの立て直し
長期休みは、同じことを考えておられるご家庭が重なる時期でもあります。そのため、休みに入ってからご連絡をいただくと、ご希望の日時をお取りしにくくなることがあります。回数を分けて進めたい場合はとくに、休みが始まる前の段階で一度ご相談いただくと、日程を組み立てやすくなります。
とはいえ、急いで決めていただく必要はありません。まずは「この休みの間にどこまでやっておきたいか」をご家庭で話しておかれるだけでも、来院時のご相談がスムーズになります。お子さまの様子や学校の予定と照らして、無理のない範囲で進め方を一緒に考えていければと思っています。当院への受診が休みのなかで負担になってしまわないよう、ご希望はそのままお伝えください。
もうひとつ大切なのが、休み明けの立て直しです。休みの間にゆるんだ就寝時刻やおやつの習慣は、放っておくとそのまま続いてしまうことがあります。休みが終わる少し前から、寝る時間と食事の時間を元に戻していくこと、歯みがきの流れをいつもの形に戻すことを意識していただくとよいと考えられています。休み明けの受診を、リズムを立て直す区切りとして使っていただくのもひとつの方法です。
よくあるご質問
Q1. 長期休みでないと受診できませんか?
A. そのようなことはありません。定期的にみていくことは季節を問わず続けていただくものです。長期休みは「回数を分けて進めやすい」「学校を休ませずに済む」といった利点がある期間として、活かしやすいタイミングとしてご案内しています。学期中のご受診も歓迎しています。
Q2. 夏休みの予約はいつごろ相談すればよいですか?
A. 混み合いやすい時期のため、休みが始まる前の段階でご相談いただくと日程を組みやすくなります。とくに何回かに分けて進めたい場合は、早めにお話しいただけると全体の見通しを立てやすくなります。休みに入ってからのご相談でも、できる範囲で調整いたします。
Q3. 休みの間に何回くらい通うことになりますか?
A. お口の状態やお子さまの年齢、慣れ具合によって変わります。状態の確認だけで終わることもありますし、内容によっては何回かに分けて進めるほうがよい場合もあります。実際の回数は、はじめに確認したうえでご相談しながら決めていきます。
Q4. 学校健診で指摘がなければ、休みに受診しなくてもよいですか?
A. 指摘がない時期こそ、状態を保つための通い方を組みやすいタイミングと考えられています。健診は限られた時間で行われるため、見えにくい部分もあります。あらためて歯科で確認しておくことで、変化に早く気づきやすくなります。
Q5. 休み中は生活リズムが崩れがちです。歯みがきはどうすればよいですか?
A. 時間が不規則になりやすい時期ですので、「寝る前は仕上げみがきまで済ませる」といった一点を決めておくと続けやすいとされています。おやつは時間を決め、飲み物をだらだらと飲み続けない工夫も役立ちます。旅行や帰省のときは、道具を持って行くだけでも流れが保ちやすくなります。
📌 長期休みは「時間が取れるタイミング」です
回数を分けて進めやすく、学校を休ませずに済み、お子さまも落ち着いて来られる期間です。
この休みの間にどこまでやっておきたいか、一緒に考えてまいります。
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック
📍 〒658-0048 神戸市東灘区御影郡家1-34-9
📞 050-1784-4369(診療時間内のみ)
🚉 阪急「御影駅」より徒歩約7分/阪神「御影駅」より徒歩約11分/JR神戸線「住吉駅」より徒歩約13分(お子さま連れの場合は15〜20分程度)
関連記事
参考文献・参考資料
- 全国歯科衛生士教育協議会 監修『歯科衛生学シリーズ 小児歯科学』(医歯薬出版、2023年)
- 一般社団法人 日本小児歯科学会
- 厚生労働省「e-ヘルスネット(歯・口の健康)」
- 学校保健安全法(児童生徒等の健康診断)
執筆・監修:河崎 真也(かわさき まさや)
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/医療法人茜会 理事長
専門:小児歯科/小児矯正/口腔機能育成
所属:日本歯科放射線学会 認定医、日本小児歯科学会
神戸市東灘区御影で、乳幼児期からのお口の健康とお口の機能(お口育て)の視点を大切に、お子さまの成長を見守る歯科医療を行っています。「明朗・愛和・喜働」を理念に、ご家族に寄り添った診療を心がけています。
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【小児歯科医監修】子どもの矯正に医療費控除は使える?|対象の考え方と必要な書類・申告の流れ|みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック|御影
2026年08月8日
執筆・監修:河崎 真也(みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/日本歯科放射線学会 認定医・日本小児歯科学会 所属)
最終更新日:2026年8月8日 / 初回公開:2026年8月8日
お子さまの矯正を考えるとき、医療費控除が使えるのかどうかは気になるところだと思います。医療費控除がどういう制度とされているのか、子どもの矯正はどう扱われることが多いのか、どんな書類が必要とされているのかを、神戸市東灘区御影の小児歯科の視点で整理しました。税の取り扱いは個別の事情によって変わりますので、最終的なご判断は国税庁の情報や所轄の税務署でご確認ください。
「子どもの矯正でも医療費控除は使えるのでしょうか」「確定申告をしたことがないのですが、何を用意すればよいですか」――東灘区/御影の当院でも、矯正のご相談の場でこうしたお問い合わせをいただくことがあります。お子さまの矯正は期間が長くなることもあり、ご家庭の負担をできるだけ軽くしたいというお気持ちは、とても自然なものだと思います。
この記事では、医療費控除という所得税の制度がどのような仕組みとされているのか、子どもの矯正がどのように扱われることが多いのか、そして申告に向けて何を準備しておくとよいのかを、わかりやすい言葉でお伝えします。あわせて、自治体のこども医療費助成との違いも整理します。なお私たちは税の専門家ではありませんので、この記事は一般的な考え方のご案内にとどめています。実際の取り扱いは、国税庁の情報や所轄の税務署でお確かめいただくようお願いいたします。
目次
医療費控除とはどんな制度?
医療費控除は所得税の制度のひとつで、1年間(1月1日から12月31日まで)に支払った医療費が一定額を超えた場合に、その分を所得から差し引くことができる仕組みとされています。所得が少なく計算されることによって、結果として納めた税金の一部について還付を受けられる場合があります。会社にお勤めの方の年末調整では扱われない項目とされているため、ご自身で確定申告をして手続きする流れになります。
ここで誤解されやすいのが、「支払った医療費がそのまま戻ってくる制度ではない」という点です。医療費控除は、あくまで所得から一定の金額を差し引く「所得控除」の仕組みとされています。したがって、還付される金額があるとしても、それは支払った医療費の額そのものではなく、ご家庭の所得の状況によって変わってくると考えられています。どのくらいの金額になるかについては個別の事情に大きく左右されますので、この記事では試算はいたしません。くわしくは国税庁の情報でご確認ください。
もうひとつ知っておいていただきたいのが、生計を一にするご家族の医療費を合算できるとされている点です。お子さまの矯正の費用だけでは一定額に届かない場合でも、同じ年にご家族が支払った医療費とあわせて考えることで、対象になる場合があります。ご家庭全体でその年の医療費を見渡してみる、という視点を持っていただくとよいと思います。
こども医療費助成とは別の制度です
お子さまの歯科治療に関するお金の話でよく混同されるのが、自治体のこども医療費助成と、この医療費控除です。この二つはまったく別の制度です。こども医療費助成は市区町村が行っている制度で、保険診療を受けたときの窓口でのお支払いを軽くしてくれるものです。一方で医療費控除は国の税の制度で、1年分の医療費をまとめて申告し、所得から差し引く手続きです。窓口で使うものと、あとから申告するもの、という違いがあると整理していただくとわかりやすいと思います。
この違いを押さえておくと大事なことがひとつ見えてきます。助成によってご家庭が実際にお支払いをしていない分については、「支払った医療費」として医療費控除の対象に含めない扱いになると考えられています。つまり、助成で負担がなかった部分を控除にも重ねて計上することはできない、という考え方です。同じように、加入している健康保険から高額療養費や給付金などを受け取った場合も、その分を差し引いて考えるとされています。
こども医療費助成そのものの内容や、歯科治療でどのように使われているかについては、別記事「子どもの医療費助成と歯科治療」でくわしくご紹介しています。助成の対象範囲や手続きは自治体ごとに定められていますので、お住まいの市区町村の案内もあわせてご確認ください。この記事では、以降は税の制度である医療費控除に絞ってお話しします。
子どもの矯正は医療費控除の対象になる?
歯列矯正について、医療費控除の取り扱いは「何のために行う治療なのか」という目的によって変わるとされています。噛み合わせや発音、お口のはたらきといった機能的な問題を改善することを目的とした矯正であれば、対象になる場合があると説明されています。一方で、見た目を整えることが主な目的と判断される場合には、対象にならないものとして扱われることがあるとされています。
そのうえで、成長期のお子さまの矯正については、発育をうながすために行われる治療として、機能的な目的が認められやすいと説明されることが多くあります。お子さまの場合は顎の成長やお口のはたらきの育ちと切り離せないためです。ただしこれは「子どもなら対象になる」と言い切れる話ではなく、個々の事情をふまえた最終的な判断は所轄の税務署によることになります。ご不安があれば、申告の前に税務署へお問い合わせいただくのが安心です。
当院では、成長を活かす矯正的な関わりのご相談は5歳ごろからを目安にご案内しています。開始時期の考え方については「小児矯正はいつから?」、治療がどのように進んでいくのかについては「子どもの歯列矯正の流れ|1期・2期治療」でくわしくまとめています。どのような目的で、どの時期にどんな関わりをしていくのかがはっきりしていることは、ご家庭が制度を検討されるうえでも助けになると考えています。
保険診療か自費診療かで変わるの?
「自費の治療だから医療費控除は使えないのでは」というご質問をいただくことがあります。医療費控除は、保険が使える治療だけを対象とする制度ではないと考えられています。自費でお支払いになった歯科治療についても、治療として必要と認められるものであれば対象になる場合があるとされています。保険が使えるかどうかという線引きと、医療費控除の対象になるかどうかという線引きは、別のものさしだとご理解いただくとよいと思います。
お子さまの矯正の多くは自費診療として行われます。保険診療と自費診療がどう違うのか、どういう考え方で分かれているのかについては、別記事「保険診療と自費診療の違い」で整理していますので、あわせてご覧ください。保険が使えるかどうかというご質問は、そちらの記事でお答えしています。
ただし、自費であれば何でも対象になるという意味ではありません。前の章でお伝えしたとおり、判断のポイントは治療の目的にあるとされています。歯科でお支払いになるもののなかには、治療とは別の性質を持つものが含まれることもあります。ご自身のケースがどう扱われるかについては、お手元の領収書の内容をもとに、税務署でご確認いただくことをおすすめします。
対象になるとされる費用・ならないとされる費用
医療費控除では、治療そのものの費用に加えて、通院にかかった交通費も対象になる場合があるとされています。電車やバスといった公共交通機関を使って通院した際の運賃がこれにあたります。お子さまの通院では保護者の付き添いが必要になることが多いと思いますが、付き添いの方の交通費についても、お子さまの通院に必要と認められる場合には対象になることがあるとされています。
一方で、対象にならないものとして扱われるとされているものもあります。よく知られているのが、自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車料金です。これらは対象外とされていますので、お車で通われている方は、交通費として計上できないものと考えておいていただくとよいと思います。また、治療とは直接関わらない物品の購入費用なども、対象の範囲から外れる場合があります。
お支払いの方法によって、どの年の医療費として数えるのかという考え方が変わることもあるとされています。たとえば分割でお支払いになる場合、その年のうちにお支払いになった分をその年の医療費として扱う考え方と、別の考え方があると説明されており、扱いが一律ではありません。当院では分割のお支払い方法についてもご相談をお受けしていますので、お気軽におたずねください。そのうえで、税の取り扱いについては国税庁の情報や税務署でお確かめいただくのが確実です。
申告に向けて用意しておきたい書類
医療費控除の手続きでいちばん基本になるのは、医療機関でお渡しした領収書です。矯正は治療期間が長くなることもありますので、お渡しした領収書はその都度ファイルなどにまとめて保管しておいてください。年をまたぐ場合は、年ごとに分けて保管しておくと、あとで集計するときに助かります。再発行が難しい場合もありますので、なくさないようにしておくことが大切です。
申告の際には「医療費控除の明細書」を使って、支払った医療費の内容をまとめて記載する形になっています。加入している健康保険から届く医療費通知を使うことで記載を簡略化できる場合もあるとされています。交通費については領収書が出ないことが多いため、通院した日付、利用した区間、金額をその都度メモに残しておくとよいと思います。あとからまとめて思い出すのは大変ですので、通院のたびに書き足す習慣にしておくと安心です。
診断書などの書類が求められるかどうかについては、ケースによって異なるとされています。歯科医院が発行できる書類には限りがありますが、当院では、どのような目的でどの時期にどんな治療を行っているのかを、ご家庭にわかるようにご説明することを大切にしています。書類が必要かどうかをまず税務署にご確認いただき、そのうえで当院で対応できることがあればご相談ください。ご準備のお手伝いができる範囲でお力になります。
確定申告の流れ|いつ・どこで手続きする?
医療費控除は、1年分の医療費をまとめて、翌年の確定申告の期間に手続きするのが基本的な流れとされています。手続きの方法としては、国税庁のオンラインの仕組みを使う方法、必要書類を郵送する方法、税務署の窓口で提出する方法などがあります。近年はオンラインでの申告が使いやすくなってきていますので、ご自宅のパソコンやスマートフォンから手続きされる方も増えているようです。
会社にお勤めの方の場合、年末調整で税の手続きが終わっているように感じられるかもしれませんが、医療費控除は年末調整では扱われない項目とされています。そのため、お勤めの方もご自身で確定申告をする必要があります。はじめての方には手続きがむずかしく感じられるかもしれませんが、税務署では申告時期に相談の受付をしていることが多いので、わからないところは直接おたずねになるのがよいと思います。
なお、申告をしそこねてしまった過去の年の分についても、あとから手続きができる場合があるとされています。「去年の分を出していなかった」という場合もあきらめず、まずは所轄の税務署にご相談ください。手続きができる期間や必要な書類は決められていますので、その点も含めて国税庁の情報や所轄の税務署でご確認ください。
当院の考え方|お口育ての視点と費用のご相談
当院は、歯並びの見た目を整えることだけを目的に矯正を考えてはいません。噛む・飲み込む・話すといったお口のはたらきを、成長にあわせて育てていく「お口育て」の視点を大切にしています。歯並びは、顎の育ちやお口のはたらきの結果として表れてくる面があると考えられています。ですから当院では、いまのお口の状態と成長の見通しをご家庭と共有したうえで、どの時期にどんな関わりをしていくのがよいかを一緒に考えていきます。
この「何を目的とした治療なのか」という点は、実は医療費控除の考え方とも重なるところがあります。お子さまの矯正について、どのような目的で、どんな見通しで進めていくのかがはっきりしていることは、ご家庭が制度をご検討されるうえでも意味を持つと考えています。当院では税に関する判断はできませんが、治療の目的や内容についてご家庭にわかるようご説明することは、私たちの役割だと思っています。
費用のことは、なかなか切り出しにくいテーマかもしれません。けれども、ご家庭の状況を無理なく続けられる形で組み立てることは、お子さまの治療を最後まで続けていくうえでとても大切です。分割のお支払い方法についてもご相談をお受けしていますので、遠慮なくおたずねください。東灘区/御影の地域のお子さまが、長い成長の期間をとおして安心して通い続けられるようお手伝いしたいと考えています。日ごろの通い方の目安は「子どもの定期健診・フッ素塗布・予防歯科まとめ」でもご紹介しています。
よくあるご質問
Q1. 子どもの矯正なら医療費控除の対象になると考えてよいですか?
A. 成長期のお子さまの矯正は、発育をうながす目的の治療として機能的な目的が認められやすいと説明されることが多くあります。ただし、対象になるかどうかの最終的な判断は所轄の税務署によることになりますので、そう決まっているものとしてお伝えすることはできません。申告の前に、国税庁の情報や税務署でお確かめください。
Q2. こども医療費助成を使っています。医療費控除も受けられますか?
A. 二つは別の制度です。ただし、助成によって実際にお支払いをしていない分は「支払った医療費」に含めない扱いになると考えられています。助成の対象外だった費用について、ご家庭が支払った分を集計して考える形になります。助成制度そのものについては「子どもの医療費助成と歯科治療」もご覧ください。
Q3. 子どもの矯正費用だけでは金額が足りないようです。どうすればよいですか?
A. 生計を一にするご家族が同じ年に支払った医療費を合算できるとされています。ご家庭全体でその年の医療費を見渡してみてください。歯科以外の通院や、保護者の方の医療費も含めて考えることになります。合算できる範囲についても国税庁の情報でご確認ください。
Q4. 歯科医院に診断書を書いてもらう必要がありますか?
A. 書類が求められるかどうかはケースによって異なるとされています。まずは税務署に必要な書類をご確認いただき、そのうえで当院で対応できることがあればご相談ください。治療の目的や内容についてのご説明は、いつでもお受けしています。
Q5. 通院の交通費も申告できますか?
A. 電車やバスなど公共交通機関を使った通院の運賃は対象になる場合があるとされています。お子さまの通院に付き添いが必要な場合、付き添いの方の分も対象になることがあるとされています。一方で、自家用車のガソリン代や駐車料金は対象外とされています。領収書が出ないぶんは、日付・区間・金額をメモに残しておいてください。
📌 費用のご相談も、遠慮なくお聞かせください
お子さまの治療を最後まで続けていくために、無理のない形を一緒に考えます。
治療の目的と見通しを、ご家庭にわかるかたちでご説明します。
税の取り扱いについては、国税庁の情報や所轄の税務署でのご確認をお願いいたします。
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック
📍 〒658-0048 神戸市東灘区御影郡家1-34-9
📞 050-1784-4369(診療時間内のみ)
🚉 阪急「御影駅」より徒歩約7分/阪神「御影駅」より徒歩約11分/JR神戸線「住吉駅」より徒歩約13分(お子さま連れの場合は15〜20分程度)
関連記事
参考文献・参考資料
- 国税庁 医療費控除に関する情報
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー(医療費控除の明細書)
- 全国歯科衛生士教育協議会 監修『歯科衛生学シリーズ 小児歯科学』(医歯薬出版、2023年)
- 一般社団法人 日本小児歯科学会
- 厚生労働省「e-ヘルスネット(歯・口の健康)」
執筆・監修:河崎 真也(かわさき まさや)
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/医療法人茜会 理事長
専門:小児歯科/小児矯正/口腔機能育成
所属:日本歯科放射線学会 認定医、日本小児歯科学会
神戸市東灘区御影で、乳幼児期からのお口の健康とお口の機能(お口育て)の視点を大切に、お子さまの成長を見守る歯科医療を行っています。「明朗・愛和・喜働」を理念に、ご家族に寄り添った診療を心がけています。
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【小児歯科医監修】小学校入学前の歯科チェックリスト|6歳臼歯・生えかわり・仕上げ磨きの見直し|みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック|御影
2026年08月7日
執筆・監修:河崎 真也(みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/日本歯科放射線学会 認定医・日本小児歯科学会 所属)
最終更新日:2026年8月7日 / 初回公開:2026年8月7日
小学校入学は、お口の中も生活のリズムも大きく変わる節目です。入学前に歯科で確認しておきたいことをチェックリストの形にまとめ、神戸市東灘区御影の小児歯科の視点でご紹介します。
「来年の春に入学なのですが、その前に歯科で何かしておいたほうがよいでしょうか」――東灘区/御影の当院でも、秋から冬にかけてこうしたご相談が増えてきます。入学の準備というと学用品や生活習慣のことが思い浮かびやすいのですが、お口のことも同じくらい区切りをつけておきたい時期にあたります。
この記事では、小学校入学前に歯科で確認しておきたい項目を、チェックリストの形で一覧にしました。それぞれの項目について、なぜ入学前に見ておきたいのか、確認できたら次にどうするのかを順にご説明します。あわせて、噛む・飲み込む・話すお口のはたらきを育てる「お口育て」の視点から、給食が始まる時期に意識していただきたいこともご紹介します。
目次
入学前が歯科の見直しどきといえる理由|チェックリスト一覧
小学校入学は、生活のリズムが大きく変わる節目です。登校と下校の時間が決まり、給食が始まり、放課後の活動も増えていきます。歯科の側から見ると、この時期は乳歯から永久歯への生えかわりが始まるタイミングと重なることが多いとされています。つまり、暮らしの変化とお口の変化が同時に訪れる時期にあたります。
もうひとつの理由は、受診の時間が取りにくくなることです。入学後は授業や下校時刻の都合があり、これまでのように日中にゆとりを持って通うことが難しくなるご家庭が少なくありません。治療が途中で止まってしまう例もみられますので、区切りのつけやすい入学前のうちに、いまのお口の状態をひととおり確認しておくことをおすすめしています。
下に、入学前に確認しておきたい項目を並べました。すべてをその場で解決する必要はありません。「確認できているもの」と「これから相談したいもの」を分けて整理しておくだけでも、入学後の見通しが立てやすくなると考えています。歯科での確認は、入学の半年ほど前から冬のあいだにご相談いただくと、時間にゆとりを持って進めやすくなります。
入学前の歯科チェックリスト
- むし歯があるかどうか、治療が残っていないか
- 6歳臼歯(第一大臼歯)が生えてきているか、汚れが残っていないか
- 前歯の生えかわりが始まっているか、ぐらついている歯があるか
- 仕上げ磨きを続けられているか、自分みがきの範囲をどうするか
- 歯の汚れの付き方と、歯ぐきの色や腫れの様子
- 噛み合わせや歯並びで気になる点があるか、どう見ていくか
- 歯をぶつけたときの連絡先と、対応の流れを知っているか
- フッ素やシーラントなどの予防手段をどう取り入れるか
- 給食に向けて、噛む・飲み込むはたらきが育っているか
① むし歯の有無と、治療の区切りをつけておく
まず確認したいのは、むし歯があるかどうか、そして治療が途中で残っていないかです。乳歯のむし歯は痛みを訴えないまま進むことがあると考えられており、見た目では気づきにくい場所にできていることもあります。歯と歯の間や奥歯の噛む面の溝は、ご家庭からは確認しづらい場所とされています。
入学前に治療の区切りをつけておきたい理由は、通院のしやすさです。入学後は平日の日中に通うことが難しくなり、通院間隔があいてしまうことがあります。とくに数回に分けて進める治療は、間隔があくと予定どおりに終わりにくくなりますので、時間の取りやすい時期のうちに進めておくほうが落ち着いて対応できます。
「もうすぐ抜けそうな乳歯のむし歯は、治療しなくてもよいのでしょうか」というご質問もいただきます。生えかわりが近い歯かどうかによって考え方は変わりますので、その歯の状態と生えかわりの見通しをあわせて確認したうえでご相談していきます。抜けるまでの期間が長い歯であれば、そのままにしないほうがよいと考えられています。
② 6歳臼歯と前歯|生えかわりの入口を確認する
入学前後の時期には、乳歯の奥にあらたな奥歯が生えてきます。これが第一大臼歯で、6歳ごろに出てくることが多いことから6歳臼歯と呼ばれています。生える時期にはお子さまによって幅があり、入学前に生えている場合も、入学してしばらくしてから生えてくる場合もあるとされています。
6歳臼歯は、生えたばかりのころに汚れが残りやすいと考えられています。歯ぐきから頭を出す途中の段階では歯の高さが低く、歯ブラシが届きにくいためです。また噛む面の溝が深く複雑な形をしているとされ、みがいたつもりでも溝の中に汚れが残ることがあります。生えてきたことに気づいたら、その歯だけをねらってみがく時間をつくっていただくとよいでしょう。
前歯についても、下の前歯からぐらつき始めることが多いとされています。抜けた歯のとなりや、生えたての永久歯のまわりは、痛みを気にしてみがきを避けてしまいがちな場所です。6歳臼歯そのもののはたらきや生えかわりの流れは、別記事「6歳児の歯の状態|生えかわりの始まりと6歳臼歯」でくわしくご紹介しています。
③ 仕上げ磨きの見直しと、自分みがきへの移行
「小学校に入ったら、そろそろ自分でみがかせたほうがよいのでしょうか」というご相談は、この時期にとても多くいただきます。ご自分でみがく習慣を育てていくことは大切ですが、入学と同時に仕上げ磨きをやめてしまうのは早いと考えられています。手先の動きが十分に育つまでには時間がかかるとされているためです。
おすすめしているのは、いきなり卒業させるのではなく、役割を分けていく進め方です。まずお子さまが自分でみがき、そのあとに大人が確認しながら足りないところを補います。とくに奥歯の噛む面、歯と歯の間、生えたての6歳臼歯のまわりは、この時期も大人の手を添えたい場所とされています。
生えかわりが始まると、歯の高さがそろわなくなり、歯ブラシの当て方も変わってきます。入学前の受診で、いまのお口に合った当て方をその場で見ていただくと、ご家庭で迷いにくくなります。仕上げ磨きをいつまで続けるかという考え方は、別記事「仕上げ磨きはいつまで?」で整理していますので、あわせてご覧ください。
④ 歯の汚れと歯ぐきの状態|入学後の学校健診にもつながる
歯の汚れの付き方と歯ぐきの様子も、入学前に見ておきたい項目です。汚れが残りやすい場所には、その子ごとの傾向があると考えられています。どこに残りやすいかを知っておくと、ご家庭でのみがき方をその場所に合わせて変えることができます。
歯ぐきについては、色が赤みを帯びていないか、みがいたときに血がにじまないかを見ていきます。この年齢で歯ぐきに軽い炎症がみられる場合、多くは汚れが残ったことによるものと考えられており、ていねいなケアを続けることで落ち着いていくことが多いとされています。にじむ血を心配してみがきを弱めてしまうと、かえって汚れが残ることもありますので、当て方を確認しておくと安心です。
入学すると、学校で歯科検診が行われ、結果が用紙で渡されるようになります。用紙にはCやCO、GやGOといった記号が使われることがあり、意味が伝わりにくいという声をよくいただきます。記号の読み方とその後の対応は、別記事「学校の歯科検診の結果の見方|C・CO・G・GOなどの記号とその後の対応」でくわしくまとめています。入学前に一度目を通しておかれると、春の用紙を落ち着いて受け取れると思います。
⑤ 噛み合わせ・歯並びで気になる点|経過観察の方針を立てておく
生えかわりが始まると、歯並びの見え方が変わります。永久歯は乳歯より大きいため、生えかわりの途中では並びが不ぞろいに見えることがあり、心配になって来られる方もいらっしゃいます。この時期の見え方がそのまま将来の歯並びになるとは限らないと考えられていますので、まずはいまの段階をどう見ていくかを決めておくことが大切です。
入学前に歯科でしておきたいのは、気になる点を書き出して、どの間隔で確認していくかという方針を立てておくことです。前歯の噛み合わせが上下で反対になっている、上下の前歯のあいだが噛み合わずにあいている、お口が開いたままのことが多い、片側だけで噛む癖がある、といった様子は、方針を決めて見ていきたい項目にあたります。
当院では、成長を活かす矯正的な関わりのご相談は5歳ごろからを目安にご案内しています。入学前はその相談時期に重なりますので、気になる点があればこの時期にご相談いただけます。ただし、入学前だからといって何かを始めなければならないというものではありません。見ていく方針が決まっていれば、あわてずに進めていけると考えています。
⑥ 歯のケガへの備えと、フッ素・シーラントの検討
入学後は活動量が増え、外遊びや体を使う遊びの機会も広がります。それにともなって、転んで前歯をぶつけるといったお口のケガも起こりやすくなると考えられています。生えたての永久歯の前歯は、ぶつけたときの影響が気になる場所ですので、備えを知っておいていただきたい項目のひとつです。
歯をぶつけたときは、できるだけ早く歯科でみてもらうことが基本とされています。歯が抜けてしまった場合は、根を強くこすらず、乾かさないようにして持ってきていただくのが望ましいと考えられています。すぐに歯科へ行けないときは、牛乳に浸けた状態でお持ちください。ご家庭にあるもので歯を乾かさずに運べる、いちばん現実的な方法と考えられています。当院へは診療時間内であれば050-1784-4369へご連絡ください。連絡先をご家族で共有しておくと、いざというときに動きやすくなります。
予防の手段についても、この時期に組み立て直しておきたいところです。生えたての永久歯は、まだ表面が成熟していないと考えられており、フッ素のはたらきを活かしやすい時期とされています。奥歯の深い溝には、汚れがたまる前に溝を埋めるシーラントという方法もあります。それぞれの考え方は「子どものフッ素はなぜむし歯予防に効くの?」と「シーラントとフッ素の使い分け」でご紹介しています。
⑦ 給食が始まる時期と「お口育て」
入学後に始まる給食は、決まった時間のなかで食べる場面です。ご家庭での食事とはちがい、限られた時間で噛んで飲み込むことが求められます。「食べるのが遅い」「食べ残しが多い」というご相談をいただくことがありますが、その背景に噛む・飲み込むはたらきの育ちが関わっている場合もあると考えられています。
当院が大切にしている「お口育て」は、噛む・飲み込む・話すといったお口のはたらきを、成長にあわせて育てていく考え方です。歯そのものを守ることと、お口のはたらきを育てることは、どちらも欠かせない両輪だと考えています。よく噛んでから飲み込む、食べるときはお口を閉じる、水で流し込まずに噛んでから飲み込む、といった日々の積み重ねが土台になります。
入学前の受診では、歯の状態とあわせて、噛み方や飲み込み方、お口を閉じていられるかといった点も見ていきます。給食という新しい場面を前に、いまどのくらい育っているかを知っておくと、ご家庭での声のかけ方も変わってきます。考え方の全体像は「「お口育て」とは?」でまとめていますので、あわせてご覧ください。
よくあるご質問
Q1. 入学前のどのタイミングで受診するとよいですか?
A. 治療が見つかった場合の時間を考えると、秋から冬のあいだにご相談いただくとゆとりを持って進めやすいと考えています。春が近づいてからでも遅いということはありませんので、気づいた時点でご相談ください。
Q2. むし歯がなさそうなら、入学前の受診は省いてもよいですか?
A. むし歯の確認だけが目的ではありません。6歳臼歯が生えてきているか、生えかわりがどこまで進んでいるか、仕上げ磨きの当て方をどう変えるかなど、この時期だからこそ見ておきたい項目があります。何もなかったことを確認できることにも意味があると考えています。
Q3. 6歳臼歯がまだ生えていないようです。遅いのでしょうか?
A. 生える時期にはお子さまによって幅があるとされており、入学してしばらくしてから出てくることもあります。歯ぐきの下でどのくらい準備が進んでいるかは、歯科で確認することで見通しを立てやすくなります。心配な場合はご相談ください。
Q4. 入学までに矯正を始めたほうがよいのでしょうか?
A. 入学という区切りに合わせて何かを始める必要はないと考えています。当院では成長を活かす矯正的な関わりのご相談は5歳ごろからを目安にご案内していますので、気になる点があればこの時期にご相談いただけます。まずは見ていく方針を決めることから始めます。
Q5. 入学したら仕上げ磨きはやめるべきですか?
A. 入学と同時にやめるのは早いと考えられています。自分でみがいたあとに大人が確認して補う形へ、少しずつ移していく進め方をおすすめしています。どの範囲を任せてどこを補うかは、いまのお口の状態を見ながらご案内します。
📌 入学前は、お口の見直しにちょうどよい区切りです
生えかわりの入口に立つこの時期に、いまの状態と見ていく方針を整えておきませんか。
チェックリストの気になる項目から、ご一緒に確認していきます。
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック
📍 〒658-0048 神戸市東灘区御影郡家1-34-9
📞 050-1784-4369(診療時間内のみ)
🚉 阪急「御影駅」より徒歩約7分/阪神「御影駅」より徒歩約11分/JR神戸線「住吉駅」より徒歩約13分(お子さま連れの場合は15〜20分程度)
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参考文献・参考資料
- 全国歯科衛生士教育協議会 監修『歯科衛生学シリーズ 小児歯科学』(医歯薬出版、2023年)
- 一般社団法人 日本小児歯科学会
- 厚生労働省「e-ヘルスネット(歯・口の健康)」
- 学校保健安全法(児童生徒等の健康診断)
執筆・監修:河崎 真也(かわさき まさや)
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/医療法人茜会 理事長
専門:小児歯科/小児矯正/口腔機能育成
所属:日本歯科放射線学会 認定医、日本小児歯科学会
神戸市東灘区御影で、乳幼児期からのお口の健康とお口の機能(お口育て)の視点を大切に、お子さまの成長を見守る歯科医療を行っています。「明朗・愛和・喜働」を理念に、ご家族に寄り添った診療を心がけています。
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【小児歯科医監修】1歳6か月児健診の歯科で聞かれること|当日までの準備と受診後の流れ|みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック|御影
2026年08月6日
執筆・監修:河崎 真也(みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/日本歯科放射線学会 認定医・日本小児歯科学会 所属)
最終更新日:2026年8月6日 / 初回公開:2026年8月6日
はじめての1歳6か月児健診は、歯科で何を聞かれるのか、何を持っていけばよいのか、迷われる方が多い場面です。健診でみている項目と、当日までに準備しておくとよいことを、神戸市東灘区御影の小児歯科の視点でまとめました。
「1歳半健診で歯科の診察があると聞いたけれど、何を聞かれるのでしょうか」「まだ歯みがきがうまくできていないので、注意されないか心配です」――東灘区/御影の当院でも、健診の前後にこうしたご相談をよくいただきます。はじめてのお子さまだと、そもそも歯科でどこをみるのかがわからず、身構えてしまうのも自然なことだと思います。
この記事では、1歳6か月児健診の歯科でみている項目、保護者が聞かれやすいこと、当日までに準備しておくとよいものを順に整理しました。あわせて、健診のあとどう歯科とつきあっていけばよいのか、そしてお口のはたらきを育てる「お口育て」の視点からご家庭で意識していただきたいことも、小児歯科医の立場でお伝えします。
目次
1歳6か月児健診とはどんな健診?
1歳6か月児健診は、母子保健法にもとづいて市区町村が行う健康診査です。3歳児健診とならんで法律で定められた健診にあたり、多くの自治体で歯科の診察が含まれています。会場での集団健診として行われることが多く、身体計測や小児科の診察、保健師との相談などとあわせて、歯科の診察と保護者へのおたずねが組み合わされる形が一般的とされています。
この時期に歯科の診察が組み込まれているのには理由があります。1歳半ごろは前歯が生えそろってきて、奥歯が生えはじめる時期にあたります。歯の本数が増えて歯と歯の間ができ、食べるものの幅も広がるため、お口の環境が大きく変わっていく時期と考えられています。変化の途中で一度全体を確認しておくタイミングとして位置づけられています。
大切なのは、健診は「できているかを採点される場」ではないという点です。その場で治療をするわけでもありません。気になるところに気づいて、次の関わりにつなげるための場です。ですから、うまくできていないことがあっても、隠さずそのまま伝えていただくほうが、お子さまに合った助言を受けやすくなると考えられています。
歯科の診察でみている項目
歯科の診察では、短い時間でお口の全体をひととおり確認していきます。みている内容は、むし歯の有無とその場所、むし歯になりかけと思われる歯の変化、歯の汚れ(歯垢)の付着の様子、歯ぐきの色や腫れ、生えている歯の本数と生え方、上下の前歯の噛み合わせ、そして上唇と歯ぐきをつなぐ小帯や舌の裏の小帯の状態などです。
歯の本数や生える順番は、この年齢では個人差が大きい部分と考えられています。同じ月齢でも本数がちがうことはよくあり、順番が前後することもあるとされています。健診では「平均どおりか」よりも、全体としてお口が育っていく流れに沿っているかをみている、と受け取っていただくとよいでしょう。生える本数や順番の目安をくわしく知りたい方は、別記事「1歳児の歯|生える本数・順番・生えはじめのケア」をご覧ください。
お子さまが泣いてしまってお口を開けられないこともありますが、それ自体が問題になることはありません。この年齢では珍しくない反応とされています。抱っこの姿勢で少しのぞかせてもらう、寝かせた姿勢で短時間だけみる、といった方法で確認が進むことが多くあります。うまくみられなかった場合は、あらためて歯科でみてもらう案内につながります。
聞かれやすいこと① 授乳・卒乳と食事の様子
歯科の診察や保健相談でよくおたずねするのが、授乳の状況です。母乳や育児用ミルクを続けているか、夜間に飲んでいるか、哺乳びんを使っているか、といった内容です。卒乳の時期については考え方に幅があり、いつまでに終えるべきと一律に決められるものではないと考えられています。ですから、聞かれたからといって「やめるように言われた」と受け取る必要はありません。
おたずねする意図は、お口の中が甘い液体に触れている時間や回数をつかむことにあります。とくに寝ながら飲む習慣があると、唾液の量が少ない時間帯にお口の中に飲み物が残りやすいとされています。そのため、寝る前に歯をみがく、飲んだあとに湯冷ましなどで口の中をさっぱりさせる、といった工夫を一緒に考えることが多くあります。
食事については、どんなかたさのものを食べているか、丸のみになっていないか、食べる時間が極端に長い、または短くないか、といった様子をうかがいます。これは食べる機能が育っているかをみる視点で、当院が大切にしている「お口育て」につながる部分です。離乳食との関わりは「離乳食と「お口育て」」でくわしくご紹介しています。
聞かれやすいこと② おやつ・飲み物と歯みがき
おやつについては、何を、1日に何回くらい与えているかをうかがうことが多くあります。ここで注目されるのは量よりも回数と時間だと考えられています。少しずつでも長い時間食べ続けていると、お口の中が酸性に傾いた状態が続きやすいとされているためです。時間を決めて出す、食べ終わりの区切りをつける、といった工夫が助言されることがあります。
飲み物についても、水やお茶が中心か、ジュースやイオン飲料、乳酸菌飲料を日常的に飲んでいるかをおたずねすることがあります。甘い飲み物をマグや哺乳びんに入れて持たせていると、少しずつ長く飲む形になりやすいとされています。おやつと同じく、飲む時間帯や回数を整えることが話題になりやすい部分です。
歯みがきについては、1日に何回みがいているか、大人が仕上げみがきをしているか、嫌がって難しくないかをうかがいます。この年齢では嫌がるお子さまが多く、毎回きれいにみがけていなくても珍しいことではないとされています。うまくいかないことも含めて伝えていただくと、具体的な方法を提案しやすくなります。始め方や姿勢のコツは「赤ちゃんの歯みがきの始め方」でまとめています。
おやつの出し方や飲み物の選び方、仕上げみがきの進め方は、ご家庭の生活リズムやお子さまの様子によって、無理のない形が変わってきます。健診で言われたことをご家庭でどう取り入れればよいか迷われたときは、LINEからお気軽にご相談ください。
聞かれやすいこと③ 指しゃぶりなどの癖
指しゃぶりやおしゃぶりの使用についても、健診でおたずねすることがあります。まず指しゃぶりについては、1歳半ごろは気持ちを落ち着ける行動としてよくみられるものと考えられています。この時期にみられること自体を心配しすぎる必要はないとされており、無理にやめさせる方向で指導されるとは限りません。
一方でおしゃぶりについては、当院では1歳6か月ごろが卒業を考えはじめる時期、遅くとも2歳ごろまでを目安としてご案内しています。1歳半健診はちょうどその時期にあたりますので、まだ使っている場合は「そろそろ考えはじめる時期」と受け取っていただくとよいと思います。使う時間を短くしていく、寝入ったら外す、といった段階的な進め方から始めるのが現実的です。
ただし、焦って急に取り上げるのはおすすめしていません。おしゃぶりを無理に取り上げると、代わりに指しゃぶりへ移ってしまうことがあると考えられており、指しゃぶりのほうが歯並びへの影響は強いとされています。急がず、その子のペースにあわせて進めていくほうが結果的にうまくいくことが多いと考えています。うまく進まないときは、ご家庭だけで抱えずご相談ください。
おたずねする理由は、長い期間続いた場合に前歯の噛み合わせや顎の育ち方に関わることがあると考えられているためです。つまり、いま止めるためではなく、どのくらい続いているか、どんな場面で出るかを把握して、これからの見守り方を考えるための質問だと受け取っていただくとよいと思います。
あわせて、お口がぽかんと開いたままのことが多くないか、いつも同じ側だけで噛んでいないか、いびきをかいたり口で息をしていないかといった様子をうかがうこともあります。これらはお口のはたらきに関わる観察点で、歯の形だけでなく機能をみる視点にあたります。気になる様子があれば、健診の場でも遠慮なく伝えていただくとよいでしょう。
当日までに準備しておくとよいもの
持ち物としてまず用意しておきたいのが、母子健康手帳と自治体から届く受診票です。受診票には事前に記入する欄があることが多く、当日の受付前に慌てないよう、前日までに書いておくと落ち着いて臨めます。歯みがきに使っている歯ブラシを持参するよう案内される自治体もありますので、届いた案内の記載を確認しておくと安心です。
当日いちばん役に立つのは、気になることを書いたメモです。健診の時間は限られているため、その場で思い出そうとすると聞き逃してしまうことがあります。歯の色が気になる、前歯の隙間が広い気がする、歯みがきを嫌がって仕上げができない、卒乳のタイミングに迷っている、といったことを2つか3つに絞って書いておくと、短い時間でも要点を相談しやすくなります。
もうひとつ準備しておくとよいのが、普段のおやつと飲み物の内容です。よく与えているおやつの名前、飲み物の種類、だいたいの回数を思い出しておくと、助言が具体的になります。1日の流れをざっと書き出しておくのもよい方法です。なお、健診の前に無理に歯みがきを完璧にしてから行く必要はありません。普段の状態を伝えるほうが、実情に合った助言につながると考えられています。
健診で指摘されやすい所見と受け取り方
この時期に指摘されやすいのは、上の前歯のあたりの汚れや歯ぐきの赤み、歯の表面が白く濁って見える変化、そして生えはじめの奥歯の様子などです。上の前歯は唾液が届きにくく汚れが残りやすい場所とされており、仕上げみがきで最後に確認したい場所と考えられています。指摘があった場所は、その後のみがき方を変えるヒントとして受け取っていただくとよいでしょう。
上唇と歯ぐきをつなぐ上唇小帯、舌の裏の舌小帯についてふれられることもあります。1歳半ごろの上唇小帯は前歯のあいだまで伸びていることも多く、成長とともに位置が変わっていくと考えられています。指摘があってもすぐに処置を決めるとは限らず、経過をみていく判断になることが少なくありません。それぞれの役割と考え方は「上唇小帯・舌小帯とは」で整理しています。
噛み合わせや歯並びについてふれられることもありますが、1歳半はまだ乳歯が生えそろう前の段階です。これから顎が育ち、奥歯が生えて噛み合わせがつくられていきます。そのため、この時期の見た目がそのまま将来につながるとは限らないと考えられており、経過をみていくという受け取り方が基本になります。授乳や食べ方に関わる様子があれば、そこから整えていくことが多くあります。
健診のあとの流れ|お口育ての視点から
健診で指摘があった場合は、あらためて歯科でみてもらうのが基本の流れになります。健診は限られた時間と明るさのなかで行われるため、見えにくい部分もあります。歯科では姿勢や照明を整えて確認できるので、いまの状態をより詳しくつかむことができます。指摘がなかった場合も、この時期に一度歯科と関わりをつくっておくと、その後の変化に気づきやすくなると考えられています。
歯科への通いはじめは、治療から入るのではなく、椅子に座る、お口を見せる、といった段階から慣れていく進め方が向いている時期です。定期的にみていく間隔や、フッ素の活用をいつごろから考えるかは、お口の状態や生えている歯の様子によって変わります。年齢に応じた通い方の目安は「子どもの定期健診・フッ素塗布・予防歯科まとめ」でご紹介しています。
当院が大切にしている「お口育て」は、噛む・飲み込む・話すといったお口のはたらきを、成長にあわせて育てていく考え方です。1歳半ごろは、食べる機能が大きく育っていく時期にあたります。よく噛んでから飲み込む、食べるときはお口を閉じる、家族で一緒に食卓につくといった日々の積み重ねが、顎の育ちやお口のはたらきに関わると考えられています。考え方の全体像は「「お口育て」とは?」でまとめています。
よくあるご質問
Q1. 1歳半健診の歯科では、どのくらいの時間みてもらえますか?
A. 集団健診では大勢のお子さまを順にみていくため、歯科の診察は短い時間になることが多いとされています。だからこそ、気になることをメモにまとめておくと聞き逃しが減ります。もっとゆっくり相談したい内容があれば、健診後に歯科であらためてご相談いただくのがおすすめです。
Q2. 歯の本数が少ない気がします。健診で問題になりますか?
A. 1歳半ごろの歯の本数には個人差が大きいと考えられており、少なめでもそれだけで問題とされるわけではありません。順番が前後することもあるとされています。本数や順番の目安は別記事「1歳児の歯|生える本数・順番・生えはじめのケア」をご覧ください。気になる場合は歯科でご相談いただくと安心です。
Q3. まだ卒乳していません。健診で注意されるでしょうか?
A. 卒乳の時期は一律に決められるものではないと考えられています。おたずねするのは、お口の中が甘い液体に触れる時間や回数をつかむためです。続いている場合は、寝る前の歯みがきなど、いまできる工夫を一緒に考えていく形になることが多くあります。
Q4. 健診で歯みがきを嫌がって泣きます。仕上げみがきができていません。
A. この年齢では嫌がるお子さまが多く、珍しいことではないとされています。短い時間で終える、寝かせた姿勢で上の前歯だけ確認する、といった進め方から始めるとよいと考えられています。具体的な方法は「赤ちゃんの歯みがきの始め方」でご紹介しています。
Q5. 健診で何も指摘されなければ、歯科に行かなくてよいですか?
A. 指摘がない時期こそ、慣れながら通う形をつくりやすいタイミングと考えられています。歯科に慣れておくと、あとで何か起きたときにも落ち着いて受診しやすくなります。通い方の目安は「子どもの定期健診・フッ素塗布・予防歯科まとめ」をご覧ください。
📌 1歳半健診は、歯科とつきあいはじめるきっかけです
うまくできていないことがあっても、そのまま伝えていただくほうが助言は具体的になります。
いまの状態とご家庭でできることを、成長にあわせてご案内します。
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック
📍 〒658-0048 神戸市東灘区御影郡家1-34-9
📞 050-1784-4369(診療時間内のみ)
🚉 阪急「御影駅」より徒歩約7分/阪神「御影駅」より徒歩約11分/JR神戸線「住吉駅」より徒歩約13分(お子さま連れの場合は15〜20分程度)
関連記事
参考文献・参考資料
- 全国歯科衛生士教育協議会 監修『歯科衛生学シリーズ 小児歯科学』(医歯薬出版、2023年)
- 一般社団法人 日本小児歯科学会
- 厚生労働省「e-ヘルスネット(歯・口の健康)」
- 母子保健法(乳幼児健康診査)
執筆・監修:河崎 真也(かわさき まさや)
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/医療法人茜会 理事長
専門:小児歯科/小児矯正/口腔機能育成
所属:日本歯科放射線学会 認定医、日本小児歯科学会
神戸市東灘区御影で、乳幼児期からのお口の健康とお口の機能(お口育て)の視点を大切に、お子さまの成長を見守る歯科医療を行っています。「明朗・愛和・喜働」を理念に、ご家族に寄り添った診療を心がけています。
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【小児歯科医監修】3歳児健診で「要観察」と言われたら|歯科でみる項目と次にすべきこと|みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック|御影
2026年08月5日
執筆・監修:河崎 真也(みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/日本歯科放射線学会 認定医・日本小児歯科学会 所属)
最終更新日:2026年8月5日 / 初回公開:2026年8月5日
3歳児健診の歯科で「要観察」と言われると、むし歯なのか、様子を見ていてよいのか迷われる方が少なくありません。要観察が意味することと、そのあとご家庭で何をすればよいのかを、神戸市東灘区御影の小児歯科の視点でまとめました。
「3歳児健診で歯のところに『要観察』と書かれていました」「むし歯ではないと言われたけれど、放っておいていいのでしょうか」――東灘区/御影の当院でも、健診のあとにこうしたご相談をよくいただきます。健診の用紙は短い言葉で書かれているため、どのくらい心配すべきなのかが伝わりにくいのだと思います。
この記事では、3歳児健診の歯科でどんな項目をみているのか、「要観察」がどういう状態を指すのか、そして次にすべきことを、小児歯科医の立場でわかりやすくお伝えします。あわせて、お口のはたらきを育てる「お口育て」の視点から、ご家庭で意識していただきたいこともご紹介します。
目次
3歳児健診の歯科では何をみているの?
3歳児健診は母子保健法にもとづいて市区町村が行う健康診査で、多くの自治体で歯科の診察が含まれています。3歳ごろは乳歯が生えそろう時期にあたるため、乳歯列全体の様子をまとめて確認できるタイミングとして位置づけられています。
歯科でみている項目は、むし歯の有無と本数、むし歯になりかけと思われる歯の有無、歯の汚れ(歯垢)の付着状態、歯ぐきの状態、噛み合わせや歯並び、上唇と歯ぐきをつなぐ小帯や舌の状態、指しゃぶりなどのお口の癖などです。短い時間で全体を確認し、気になるところを記録していく形になります。
健診は「その場で治療をする場」ではなく「気づいて次につなげる場」です。ですから、指摘があった項目は、あらためて歯科で詳しくみてもらうことが前提になっていると考えていただくとよいでしょう。3歳ごろのお口の全体像については、別記事「3歳児の口の中の状態」もあわせてご覧ください。
「要観察」と言われたときの意味
「要観察」は、いますぐ治療が必要な状態とまでは言えないけれど、そのままにせず経過をみていきたい、という判断を表す言葉として使われます。「異常なし」と「要治療」の中間にあたる区分と考えていただくとわかりやすいと思います。
大切なのは、要観察は「様子を見るだけで何もしなくてよい」という意味ではないという点です。むしろ、変化しやすい状態だから定期的に確認していきましょう、という前向きな呼びかけに近いものと受け取っていただくのがよいと考えられています。放置すると進んでしまう場合もあり、逆にご家庭のケアと歯科での関わりで落ち着いていく場合もあるとされています。
また、要観察が書かれる理由はひとつではありません。むし歯になりかけの歯があるとき、歯の汚れが多いとき、歯ぐきに軽い炎症がみられるとき、噛み合わせが気になるときなど、項目によって意味も次の対応も変わります。まずは「どの項目に対する要観察なのか」を確認することが第一歩になります。
なお、要観察と書かれたことは、ご家庭のケアが足りなかったという評価ではありません。歯の形や生えかた、唾液のはたらきなど、ご家庭の努力だけでは決まらない要素もかかわっています。
要観察歯(CO)とは|むし歯とのちがい
健診の記録に「CO」という記号が使われることがあります。これは要観察歯を表すもので、穴があいたむし歯(C)には至っていないけれど、歯の表面が白く濁って見えるなど、むし歯になりかけと思われる変化がみられる歯を指すとされています。
歯の表面は、酸によってカルシウムなどが溶け出す脱灰と、唾液のはたらきで戻っていく再石灰化を繰り返していると考えられています。COはこのバランスが脱灰に傾きかけたサインとされ、この段階であれば、歯みがきの見直しや甘い物の摂り方の工夫、フッ素の活用などで進行を抑えやすいと考えられています。だからこそ「削って治す」より前の段階で気づくことに意味があります。
C・CO・G・GOといった記号の意味は、別記事「歯科検診の結果の見方|C・CO・G・GOなどの記号とその後の対応」でくわしく整理しています。フッ素の使い方については「子どものフッ素はなぜむし歯予防に効くの?」もご参照ください。
歯の汚れ・歯ぐきを指摘されたとき
毎日ていねいにみがいていても、3歳ごろのお口は歯の並びも動きも変わっていく時期なので、届きにくい場所はどうしても出てきます。歯垢の付着が多いと指摘された場合は、仕上げみがきの届いていない場所があることが多いとされています。3歳ごろはお子さまが自分でみがきたい気持ちが育つ一方、細かい部分まで自分でみがききるのはまだ難しい時期です。お子さまがみがいたあとに、大人が仕上げみがきで補うことが大切と考えられています。
みがき残しが出やすいのは、奥歯の噛む面の溝、歯と歯の間、そして上の前歯の歯ぐきぎわとされています。とくに上の前歯は唾液が届きにくく、汚れが残りやすい場所と言われています。歯ブラシを歯と歯ぐきの境目にやさしく当て、小さく動かすことを意識してみてください。
歯ぐきの赤みや腫れを指摘された場合も、多くは汚れが残ったことによる軽い炎症と考えられています。ていねいなケアを続けることで落ち着いていくことが多いとされていますが、出血が続く、痛みがある、腫れが大きいといった様子があるときは、早めに歯科でみてもらうと安心です。また、歯ぐきの一部がぷくっとふくらんでいるように見えるときは、痛みがなくても一度みせていただきたい所見です。
上唇や舌の小帯(歯ぐきや舌の裏のすじ)について記載があった場合は、いまの状態と、これからの育ちのなかでどう関わっていくかを、実際に拝見したうえでご説明します。
歯並び・噛み合わせを指摘されたとき
3歳児健診では、噛み合わせや歯並びについて気になる点を記録されることもあります。ただし3歳ごろは乳歯列が完成したばかりの段階で、これから顎が育ち、やがて永久歯に生えかわっていきます。そのため、この時期の歯並びがそのまま将来の歯並びになるとは限らないと考えられています。
この年齢での指摘は、多くの場合すぐに装置を使うためのものではなく、成長の様子を継続してみていきたいという意味合いが中心になります。当院でも、成長を活かす矯正的な関わりのご相談は5歳ごろからを目安としてご案内しており、3歳の時点では顎とお口のはたらきの育ちを見守ることを大切にしています。
一方で、上下の前歯の噛み合わせが反対になっている、お口が開いたままのことが多い、片側だけで噛む癖がある、乳歯のうちから歯と歯の隙間がほとんどないといった様子は、早めにご相談いただくとその後の見守り方を立てやすくなります。顎の発育と歯並びのつながりは、別記事「子どものあごの発育と歯並びの関係」もご覧ください。
指しゃぶりを指摘されることもあります。3歳ごろは、無理にやめさせる時期というより、お子さま自身と「どうしていこうか」を一緒に考えはじめる時期と考えています。当院では半年から1年くらいの幅で様子をみながら、お口の育ちに合わせて声をかけていきます。急がせることはありませんので、気になったときにご相談ください。
要観察のあと、いつ歯科へ行けばいい?
要観察と言われたら、できるだけ早めに一度歯科でみてもらうことをおすすめしています。健診は限られた時間で行われるため、光の当たり方や体勢によって見えにくい部分もあります。歯科であらためて確認することで、いまの状態をより詳しくつかむことができます。
当院では、健診から1か月以内のご受診をおすすめしています。とくに要観察歯(CO)の指摘があった場合は、状態が変化しやすい段階とされているため、時間をおかずにみてもらうほうが選べる関わり方が広がります。痛みや変色など気になる様子があるときは、日をおかずにご相談ください。また、以前に転んで前歯をぶつけたことがあり、その歯の色が周りとちがって見えるときも、痛みがなくてもご相談ください。
受診のときは、健診の結果が書かれた用紙と母子健康手帳をお持ちいただくと、どの項目についての指摘だったかを共有しやすくなります。年齢に応じた通い方の目安は「子どもの定期健診・フッ素塗布・予防歯科まとめ」でご紹介しています。
ご家庭でできること|お口育ての視点から
要観察と言われたあとにご家庭でできることは、大きく分けて三つあると考えています。ひとつめは仕上げみがきの見直し、ふたつめは甘い物の摂り方の工夫、そして三つめが、お口のはたらきそのものを育てる「お口育て」の視点です。
甘い物については、量よりも回数と時間が関わると考えられています。だらだらと長い時間食べ続けると、お口の中が酸性に傾いた状態が続きやすいとされています。おやつの時間を決める、飲み物は食事のときに分けて出すなど、区切りをつける工夫が役立ちます。くわしくは「むし歯にならない習慣づくり」でもご紹介しています。
「お口育て」は、噛む・飲み込む・話すといったお口のはたらきを、成長にあわせて育てていく考え方です。よく噛んでから飲み込む、食べるときはお口を閉じる、といった日々の積み重ねは、唾液のはたらきを活かすことや顎の育ちに関わると考えられています。考え方の全体像は「「お口育て」とは?」でまとめています。
歯科での経過観察はどう進めるの?
歯科での経過観察は、間隔を決めて同じ場所を継続してみていく形で進めます。前回とくらべて変化があるかどうかを確認できることが、経過観察のいちばんの価値だと考えています。通う間隔はお口の状態やケアの様子によって変わりますが、3か月から4か月ごとを目安にご案内することが多くあります。この間隔は、塗布したフッ素のはたらきが弱まっていく時期にあわせたものでもあります。むし歯になりやすい状態が続いているお子さまの場合は、毎月から2か月ごとに拝見することもあります。
来院時には、状態の確認とあわせて、汚れの落とし方のご案内やフッ素の塗布をご相談します。溝の深さや歯ブラシの届きやすさによっては、奥歯の溝を保護するシーラントをご相談することもあります。シーラントの考え方は「シーラントとフッ素の使い分け」でご紹介しています。あわせて、噛み方や飲み込み方といったお口のはたらきの育ちも確認していきます。
当院では、東灘区/御影の地域のお子さまが歯科に慣れていけるよう、いきなり治療から入らず、みてもらうことに慣れる段階から進めていくことを大切にしています。要観察は、通いはじめるきっかけとしてちょうどよいタイミングでもあります。気になることは小さなことでもおたずねください。
よくあるご質問
Q1. 「要観察」は放っておいても大丈夫ですか?
A. 要観察は「何もしなくてよい」という意味ではなく、変化しやすいので定期的にみていきましょうという区分と考えられています。ご家庭でのケアを見直しつつ、一度歯科で状態を確認していただくと安心です。
Q2. 要観察歯(CO)は治療して削ることになりますか?
A. COは穴があいた状態までは至っていないとされる段階です。歯みがきや甘い物の摂り方の工夫、フッ素の活用などで進行を抑えていく関わりが中心になることが多く、その場で削ると決まるわけではありません。実際の対応は歯科での確認のうえでご相談します。
Q3. 3歳で歯並びを指摘されました。矯正を始めたほうがよいですか?
A. 3歳ごろは乳歯列が完成したばかりで、これから顎が育つ時期です。この段階では成長の様子を見守ることが基本と考えられています。当院では成長を活かす矯正的な関わりのご相談は5歳ごろからを目安にご案内しています。気になる様子があれば、まずはご相談ください。
Q4. 健診でむし歯なしと言われたら、歯科に行かなくてよいですか?
A. むし歯がない時期こそ、状態を保つための通い方を組みやすいタイミングと考えられています。定期的にみていくことで、変化に早く気づきやすくなります。3歳ごろから歯科に慣れておくことは、その後の受診のしやすさにもつながります。
Q5. 子どもが歯科をとても嫌がります。受診できるでしょうか?
A. 3歳ごろは不安を感じやすい時期です。当院では、いきなり治療から入るのではなく、椅子に座る・お口を見せるといった段階から少しずつ慣れていただく進め方を大切にしています。無理に進めることはありませんので、まずはご相談ください。
📌 「要観察」は、通いはじめるきっかけです
むし歯になる前の段階で気づけたことには、大きな意味があると考えています。
いまの状態とご家庭でできることを、成長にあわせて具体的にご案内します。
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック
📍 〒658-0048 神戸市東灘区御影郡家1-34-9
📞 050-1784-4369(診療時間内のみ)
🚉 阪急/阪神「御影駅」より徒歩約7分/JR神戸線「住吉駅」より徒歩約13分(お子さま連れの場合は15〜20分程度)
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参考文献・参考資料
- 全国歯科衛生士教育協議会 監修『歯科衛生学シリーズ 小児歯科学』(医歯薬出版、2023年)
- 一般社団法人 日本小児歯科学会
- 厚生労働省「e-ヘルスネット(歯・口の健康)」
- 母子保健法(乳幼児健康診査)
執筆・監修:河崎 真也(かわさき まさや)
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/医療法人茜会 理事長
専門:小児歯科/小児矯正/口腔機能育成
所属:日本歯科放射線学会 認定医、日本小児歯科学会
神戸市東灘区御影で、乳幼児期からのお口の健康とお口の機能(お口育て)の視点を大切に、お子さまの成長を見守る歯科医療を行っています。「明朗・愛和・喜働」を理念に、ご家族に寄り添った診療を心がけています。
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子どもの抜歯後の治癒経過|当日の過ごし方と注意すべき症状|小児歯科医監修|みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック
2026年06月23日
監修:河崎 真也(みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/医療法人茜会 理事長)
日本歯科放射線学会 認定医/日本小児歯科学会 所属
神戸市東灘区御影で小児歯科・小児矯正・口腔機能育成を専門に診療
公開日 2026年6月14日/監修日 2026年6月14日
「子どもの歯を抜いたあと、ガーゼはいつまで噛ませればいいの?」「食事は何を食べさせていいの?」――東灘区/御影の当院でも、抜歯のあと、保護者の方からこうしたご質問をよくいただきます。お子さまの抜歯は、保護者の方にとっても心配なものです。けれども、抜歯後にどのように治っていくのかという見通しと、当日の過ごし方のポイントを知っておくと、落ち着いて対応していただけます。
本記事では、子どもの抜歯後の当日の過ごし方とお食事のルール、治癒経過のタイムライン、注意すべき症状、まれに起こる合併症の見分け方、そして永久歯が生えてくるまでのスペース管理について、神戸市東灘区御影のみかげ小児歯科・矯正歯科クリニックがご案内します。お子さまのお口を健やかに育てる「お口育て」の視点も交えてお伝えします。
抜歯当日の過ごし方とお食事ルール
抜歯のあと、治癒の第一歩となるのが、抜いた穴(抜歯窩:ばっしか)にできる血のかたまり「血餅(けっぺい)」です。この血餅が抜歯窩にしっかりとどまることで、その後の治りがスムーズに進みます。当日の過ごし方は、この血餅を守ることが目的だと考えると分かりやすくなります。
ガーゼと止血のポイント
抜歯のあとは、清潔なガーゼを傷口に当て、20〜30分ほどしっかり噛んで圧迫します。これで多くの場合は出血が落ち着きます。お子さまがガーゼを噛み続けるのが難しいときは、保護者の方が時間を見てあげてください。にじむ程度の出血が少し続くことはありますが、唾液に少し血が混じる程度であれば心配いりません。気になって何度も傷口を舌や指で触ったり、強くうがいをしたりすると、せっかくの血餅がはがれてしまうため避けましょう。
当日のお食事と過ごし方
麻酔が効いているあいだは、唇や頬の感覚が鈍く、噛んでも気づきにくいため、食事は麻酔が切れてからにしましょう。当日は、おかゆ・やわらかいうどん・ヨーグルト・スープなど、刺激の少ないやわらかい食べ物がおすすめです。熱すぎるもの、辛いもの、せんべいのような硬いものは避けてください。また、当日は激しい運動・長風呂・湯船での長湯は控えめにします。血行が良くなりすぎると、再び出血しやすくなることがあるためです。歯みがきは、抜いた部分を避けてやさしく行ってください。
治癒経過のタイムライン
抜歯後の傷がどのように治っていくのか、おおまかなタイムラインを知っておくと、見通しを持って見守ることができます。あくまで目安であり、お子さまの年齢や抜いた歯の状態によって個人差があります。
当日〜数時間:血餅ができる
抜歯後30分ほどで出血が落ち着き、抜歯窩に血餅ができはじめます。この血餅が、傷口を細菌や刺激から守るふた(かさぶた)の役割を果たします。この段階で血餅を守ることが、その後の治癒を左右します。
1日〜1週間:歯ぐきがふさがりはじめる
数日のうちに、抜歯窩のまわりの歯ぐきが内側に向かって伸び、傷口の表面が新しい組織でおおわれていきます(上皮化:じょうひか)。痛みや違和感は通常、2〜3日をピークに少しずつやわらいでいきます。1週間ほどで歯ぐきの表面はかなり落ち着いてきます。
数週間〜数ヶ月:骨が作られていく
歯ぐきの表面が治ったあとも、抜歯窩の内部では時間をかけて骨が作られていきます(骨形成)。表面が落ち着いても内部の治りは続いているため、しばらくは抜いた部分をいたわってあげてください。この骨形成が進むことで、抜歯窩は周囲の骨となじんでいきます。歯ぐきの表面が早く治ったように見えても、骨がしっかり作られるまでには数週間から数ヶ月かかります。お子さまが痛みを訴えなくなっても、抜いたばかりの部分を硬いもので強く噛んだり、指や舌で繰り返し触ったりしないよう、しばらくは気をつけてあげると安心です。
注意すべき症状と受診の目安
多くの場合、抜歯後の経過は順調に進みます。ただし、次のような症状があるときは、歯科医院に連絡・受診していただく目安となります。落ち着いて様子を見るための目安としてお役立てください。
出血が止まらないとき
にじむ程度の出血は通常、当日のうちに落ち着きます。新しいガーゼを丸めて30分ほどしっかり噛んでも、口の中に血があふれてくるような出血が続く場合は、傷口を触りすぎていないか確認したうえで、歯科医院にご連絡ください。診療時間外であっても出血が強い場合は、まず連絡先に相談しましょう。
痛み・腫れ・発熱が強いとき
抜歯後の痛みは通常2〜3日をピークに引いていきます。日が経つにつれて痛みが強くなる、頬が大きく腫れる、高い熱が出る、といった場合は、傷口の感染などが考えられます。早めに歯科医院でご相談ください。お子さまが痛みをうまく言葉で伝えられないこともあるため、食事をいやがる・元気がない・触ると痛がるといった様子も手がかりにしてください。
ドライソケットなど合併症の見分け方
抜歯後の合併症として知られるものに「ドライソケット」があります。子どもの乳歯の抜歯ではまれですが、知っておくと早めの対応につながります。
ドライソケットとは
ドライソケットは、抜歯窩を守るはずの血餅がはがれてしまい、その下の骨が露出した状態です。傷口を細菌や刺激から守るふたがなくなるため、強い痛みが出ることがあります。抜歯から数日たってから、痛みがやわらぐどころか強くなってきた場合は、この可能性を考えます。うがいのしすぎや、傷口を繰り返し触ることが原因になりやすいため、当日の過ごし方で血餅を守ることが予防につながります。
気になるときは早めに受診を
ドライソケットが疑われる場合や、いつもと違う強い痛みが続く場合は、自己判断で様子を見すぎず、歯科医院でご相談ください。歯科医院では傷口を清潔にし、治癒を助ける処置を行います。なお、抜歯ではなく転倒などで歯をぶつけた場合の対応は、別記事「子どもが歯をぶつけた|年齢別の応急処置と受診の目安」でご案内しています。
永久歯が生えてくるまでのスペース管理
乳歯を抜いたあとに大切になるのが、永久歯が生えてくるためのスペースの管理です。これは、抜いた歯の場所と、その下にある永久歯の状態によって考え方が変わります。当院では、レントゲン検査で後継永久歯(こうけいえいきゅうし:そのあとに生えてくる永久歯)の位置や発育を確認しながら判断しています。
生え変わりが近いとき
抜いた乳歯のすぐ下で永久歯が生えてくる準備が整っている場合は、特別なスペース管理をしなくても、自然に永久歯が生えてくるのを待てることが多いです。生え変わりの時期や、乳歯がぐらぐらしてくる経過については、別記事「乳歯がぐらぐらする|生え変わりの時期と注意点」もご参照ください。
永久歯が生えてくるまで時間があるとき
むし歯などで奥歯の乳歯を早く失い、後継永久歯が生えてくるまでまだ時間がある場合は、隣の歯がそのスペースに移動してこないよう、場所を保つための装置(保隙装置:ほげきそうち)を使うことがあります。これは、後から生えてくる永久歯の場所を確保しておくためのものです。保隙装置が必要かどうかは症例によって異なり、すべてのお子さまに使うわけではありません。レントゲンで状況を確認し、ご家族にご説明したうえで判断します。永久歯がなかなか生えてこない場合の考え方については「永久歯が生えてこない|先天欠如・晩生・受診の目安」もあわせてご覧ください。
将来の歯並びと「お口育て」
乳歯を早く失うと、永久歯の並ぶスペースに影響することがあります。当院が大切にしている「お口育て」では、抜歯後のスペース管理も、将来の歯並びやかみ合わせを見すえた成長のサポートの一部だと考えています。生え変わりの時期に合わせた矯正の考え方については、別記事「子どもの矯正歯科、いつ始める?年齢別の判断基準」でご案内しています。
よくあるご質問
Q1. ガーゼはいつまで噛ませればいいですか?
A. 抜歯直後にガーゼを20〜30分ほどしっかり噛んで圧迫すれば、多くの場合は出血が落ち着きます。それでもにじむようなら、新しいガーゼに替えてもう一度同じ時間噛んでください。何度替えても口の中に血があふれるような出血が続く場合は、歯科医院にご連絡ください。長く噛みすぎる必要はなく、出血が落ち着いたら外して構いません。
Q2. 当日はうがいや歯みがきをしてもいいですか?
A. 抜歯当日は、強くぶくぶくとうがいをするのは控えてください。血餅がはがれて治りが遅れたり、ドライソケットの原因になることがあります。口をすすぐときは、水を含んでそっと吐き出す程度にしましょう。歯みがきは、抜いた部分を避けてほかの歯はいつもどおりやさしく磨いて構いません。清潔を保つことも治癒には大切です。
Q3. 抜いたあと、永久歯が生えてくるか心配です。
A. 多くの乳歯には、そのあとに生えてくる後継永久歯があり、生え変わりが近ければ自然に生えてくるのを待てることが多いです。当院では、レントゲンで永久歯の位置や発育を確認し、生えてくるまで時間がある場合はスペースを保つ装置を検討します。先天的に永久歯がない場合もあるため、レントゲン検査で状況を確認しながら、長期的にサポートしていきます。麻酔や抜歯後の注意全般については「子どもの抜歯・麻酔のあとの注意点」もご参照ください。
📌 抜歯後は「血餅を守る」ことが治癒の第一歩です
当日はやわらかい食事とやさしいケアで、傷口をいたわってあげてください。
強い痛みや出血が続くときは、ためらわず当院までご相談ください。
🦷 みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック
📍 〒658-0048 神戸市東灘区御影郡家1-34-9
📞 050-1784-4369(代表)
🚉 阪急/阪神「御影駅」より徒歩約7分/JR神戸線「住吉駅」より徒歩約13分(お子さま連れの場合は15〜20分程度)
院長 河崎 真也(日本歯科放射線学会 認定医・日本小児歯科学会 所属)
📚 参考文献
- 日本小児歯科学会『小児歯科臨床マニュアル』
- 日本口腔外科学会『抜歯ガイドライン』
- 医歯薬出版『小児歯科学』第6版
監修者プロフィール
河崎 真也(かわさき まさや)
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/医療法人茜会 理事長
日本歯科放射線学会 認定医/日本小児歯科学会 所属
神戸市東灘区御影で、小児歯科・小児矯正・口腔機能育成(お口育て)を専門に診療。抜歯後の治癒経過については、後継永久歯の発育やスペース管理まで含めて、レントゲン診断と長期的な視点でご家族にご説明しています。
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子どもの歯肉炎・歯ぐきの腫れ|原因と家庭ケア・受診の目安|小児歯科医監修|みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック
2026年06月23日
監修:河崎 真也(みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/医療法人茜会 理事長)
日本歯科放射線学会 認定医/日本小児歯科学会 所属
神戸市東灘区御影で小児歯科・小児矯正・口腔機能育成を専門に診療
公開日 2026年6月7日/監修日 2026年6月7日
「仕上げ磨きのときに、子どもの歯ぐきが赤く腫れていた」「歯みがきのたびに歯ぐきから血が出る」――東灘区/御影の当院でも、保護者の方からこうしたご相談をいただくことがあります。歯肉炎(しにくえん)は、大人だけの病気ではありません。子どもにも起こり、しかもその多くは家庭でのケアと適切な対応で改善が期待できるものです。
一方で、子どもの歯ぐきトラブルには、生え変わりの時期に特有のものや、まれに見逃せない疾患が隠れていることもあります。本記事では、子どもの歯ぐきトラブルが大人と何が違うのか、歯肉炎の主な原因、歯肉炎と歯周病の違い、家庭でのケアと医院での処置、そして予防のための日常習慣を、神戸市東灘区御影のみかげ小児歯科・矯正歯科クリニックがご案内します。お子さまのお口を健やかに育てる「お口育て」の視点も交えてお伝えします。
子どもの歯ぐきトラブルは大人と何が違うか
大人の歯ぐきの病気というと、歯を支える骨が溶けていく「歯周病(ししゅうびょう)」を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、子どもの歯ぐきトラブルの大半は、骨が溶けるところまでは進んでいない「歯肉炎」の段階です。歯肉炎は、歯ぐきの表面だけに炎症が起きている状態で、適切なケアによって元の健康な歯ぐきに戻ることが期待できます。ここが、進行すると元に戻りにくい大人の歯周病との大きな違いです。
また、子どもは乳歯から永久歯へ生え変わる時期があり、この生え変わりに伴って歯ぐきが一時的に腫れることがあります。歯が歯ぐきを破って出てくるときに起こる「萌出性歯肉炎(ほうしゅつせいしにくえん)」は、子ども特有のトラブルです。大人と同じ目線だけで判断せず、年齢や生え変わりの段階を踏まえて見ていくことが大切になります。当院では、レントゲン検査も活用しながら、生え変わりの状況とあわせて歯ぐきの状態を確認しています。
子どもの歯肉炎の主な原因
子どもの歯肉炎には、いくつかの原因が重なって起こることがあります。代表的な4つの原因を整理します。お子さまの歯ぐきの状態を考えるときの手がかりにしてください。
原因① プラーク(歯垢)の磨き残し
最も多い原因が、プラーク(歯垢:しこう)の磨き残しです。プラークは細菌のかたまりで、歯と歯ぐきの境目にたまると、その細菌が出す物質によって歯ぐきに炎症が起こります。子どもは細かい部分まで自分で磨くのが難しく、特に奥歯や歯と歯のあいだ、生えかけの歯のまわりに磨き残しが生じやすい傾向があります。歯肉炎の多くは、このプラークを丁寧に取り除くことで改善が期待できます。
原因② 生え変わり期の萌出性歯肉炎
前述の萌出性歯肉炎です。永久歯が歯ぐきを破って生えてくるとき、出かけた歯の頭が歯ぐきにかぶさった状態になり、その部分にプラークがたまりやすくなります。生えかけの6歳臼歯(第一大臼歯)のまわりは、特に磨きにくく腫れやすい場所です。生え変わりが進んで歯が出そろうと自然に落ち着くことも多いですが、その間の清掃が難しいため、仕上げ磨きでのサポートが大切です。
原因③ 思春期のホルモン変化
思春期になると、ホルモンの変化によって歯ぐきが炎症を起こしやすくなることがあります。プラークの量は同じでも、歯ぐきが過敏に反応して赤く腫れたり、出血しやすくなったりするのが特徴です。これは「思春期性歯肉炎」と呼ばれることがあります。ホルモンの影響による反応であるため、丁寧な歯みがきを続けながら成長を見守ることで、自然に落ち着いていくことも少なくありません。腫れが強い場合は、医院でのクリーニングをおすすめします。
原因④ 口呼吸・全身的な要因
いつも口が開いている口呼吸の習慣があると、前歯のまわりの歯ぐきが乾燥し、炎症が起きやすくなることがあります。また、まれにではありますが、全身の状態が歯ぐきに現れることもあります。歯みがきをきちんとしているのに歯ぐきの腫れや出血が強い、急に悪化した、といった場合には、お口だけでなく全身の状態も含めて確認が必要なことがあります。気になる変化があれば、自己判断せず歯科医院でご相談ください。
歯肉炎と歯周病の違い・見分け方
「歯肉炎」と「歯周病(歯周炎)」は、どちらも歯ぐきに関わる病気ですが、進行の程度が異なります。違いを知っておくと、お子さまの歯ぐきの状態を落ち着いて受けとめやすくなります。
歯肉炎は「歯ぐきの表面だけ」の炎症
歯肉炎は、炎症が歯ぐきの表面にとどまっている状態です。歯ぐきが赤く腫れる、歯みがきで出血する、といった症状が見られますが、歯を支える骨にはまだ影響が及んでいません。この段階であれば、プラークを丁寧に取り除くことで、健康な歯ぐきに戻ることが期待できます。子どもの歯ぐきトラブルの多くは、この歯肉炎の段階です。
歯周病は「骨まで及んだ」炎症
歯肉炎を放置して炎症が進むと、歯を支える骨(歯槽骨:しそうこつ)が溶けはじめる「歯周病(歯周炎)」へと移行することがあります。子どもで一般的な慢性の歯周病に進むことはまれですが、ごく一部に、若い年代で進行する「若年性歯周炎」と呼ばれるタイプがあります。これは家族内で起こりやすい傾向や、特定の細菌が関わるとされており、早めの発見と対応が大切です。歯みがきをしているのに歯がぐらつく、歯ぐきが下がってきた、といった所見があるときは、早めに歯科医院で確認してもらいましょう。
受診の目安となるサイン
次のようなサインが見られるときは、歯科医院での確認をおすすめします。歯ぐきの赤みや腫れが数週間続く、歯みがきのたびに出血する、歯ぐきから膿(うみ)のようなものが出る、永久歯なのに歯がぐらつく、口臭が強くなった、などです。歯ぐきの出血や腫れについては、別記事「子どもの歯ぐきから血が出る|原因と家庭での対応」「子どもの歯ぐきが腫れているとき|考えられる原因」もあわせてご覧ください。
家庭でのケアと医院での処置
子どもの歯肉炎は、家庭でのケアと医院での処置を組み合わせることで、改善を目指していきます。それぞれのポイントをご説明します。
家庭でできるケア
基本は、プラークをしっかり取り除く歯みがきです。歯と歯ぐきの境目に毛先を当て、力を入れすぎず小刻みに動かします。出血すると怖くなって磨くのをやめてしまいがちですが、炎症のある歯ぐきはやさしく磨いて清潔にすることで、かえって落ち着いていくことが多いものです。低学年までのお子さまは、保護者の方の仕上げ磨きが欠かせません。生えかけの歯や奥歯のまわりは特に意識して磨いてあげてください。
医院での処置
歯科医院では、お子さま自身では取りきれないプラークや歯石を、歯科衛生士が専用の器具でクリーニング(スケーリングなど)します。あわせて、お子さまの歯並びや生え変わりの段階に合わせた歯みがきの方法をお伝えし、苦手な部分を一緒に確認します。当院では、お子さまが歯医者を怖がらないよう、声かけや段階的な慣らしを大切にしながら進めています。炎症の原因がはっきりしない場合や、若年性歯周炎が疑われる場合には、レントゲン検査などで歯を支える骨の状態を確認します。
予防のための日常習慣と「お口育て」
歯肉炎は、日々の習慣で予防が期待できるトラブルです。当院が大切にしている「お口育て」の視点も交えて、ご家庭で取り組めることをご紹介します。
毎日の歯みがきと仕上げ磨きの習慣
歯肉炎予防の基本は、毎日の歯みがきでプラークをためないことです。お子さまの年齢に合った歯ブラシを選び、特に夜の仕上げ磨きを習慣にしましょう。歯と歯のあいだは歯ブラシだけでは届きにくいため、お子さまの成長に応じてデンタルフロスの使用も検討してみてください。仕上げ磨きは、いやがるお子さまには短時間からでも構いません。毎日続けることが何よりの予防になります。
「お口育て」で土台から整える
「お口育て」とは、歯並びだけでなく、噛む力・舌の使い方・呼吸・姿勢を含めた口腔機能の発達を、成長の時期に整えていく考え方です。よく噛んで食べることは、唾液の分泌をうながし、お口の中を清潔に保つ助けになります。また、口を閉じて鼻で呼吸する習慣は、前歯まわりの歯ぐきの乾燥を防ぎます。歯みがきという「掃除」だけでなく、お口の機能そのものを育てることが、歯ぐきの健康にもつながると当院は考えています。
定期的なチェックで早く気づく
歯肉炎は早く気づくほど、家庭でのケアで改善しやすくなります。定期的に歯科医院に通うことで、初期の段階で気づき、磨き残しの場所や歯みがきのくせを早めに見直すことができます。むし歯の予防とあわせた予防歯科の通い方については、別記事「子どもの定期健診・フッ素塗布・予防歯科まとめ」もご参照ください。歯ぐきの炎症が、むし歯のリスクと一緒に見つかることもあります。治療が必要なむし歯については「子どもの虫歯治療|進行ステージ別の対応」でご案内しています。
よくあるご質問
Q1. 歯みがきで歯ぐきから血が出ます。磨かない方がいいですか?
A. 出血があると磨くのをためらってしまいますが、多くの場合は炎症のある歯ぐきにプラークがたまっているサインです。やさしく丁寧に磨いて清潔に保つことで、歯ぐきの炎症が落ち着き、出血も減っていくことが多いです。強くこすりすぎないよう、力を抜いて磨いてあげてください。数週間続けても出血が改善しない場合は、歯科医院でご相談ください。
Q2. 子どもでも歯周病になりますか?
A. 子どもの歯ぐきトラブルの多くは、骨が溶けるところまでは進んでいない歯肉炎の段階です。大人に多い慢性の歯周病に進むことはまれですが、ごく一部に若い年代で進行する若年性歯周炎というタイプがあります。歯がぐらつく、歯ぐきが下がる、といった所見があるときは、早めに歯科医院で確認してもらうと安心です。
Q3. 生えかけの永久歯のまわりだけ腫れています。大丈夫ですか?
A. 永久歯が生えてくるときに起こる萌出性歯肉炎の可能性があります。生えかけの歯はプラークがたまりやすく、歯ぐきがかぶさって磨きにくいため、一時的に腫れることがあります。歯が出そろうと自然に落ち着くことも多いですが、痛みが強い、腫れが大きい、食事がとりにくいといった場合は、歯科医院でご相談ください。仕上げ磨きでその部分を清潔に保つことが大切です。
📌 子どもの歯肉炎は、早めのケアで落ち着くことが多いトラブルです
毎日のやさしい歯みがきと仕上げ磨き、そして定期的なチェックが予防の基本です。
歯ぐきの赤みや腫れ、出血が気になるときは、お気軽に当院までご相談ください。
🦷 みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック
📍 〒658-0048 神戸市東灘区御影郡家1-34-9
📞 050-1784-4369(代表)
🚉 阪急/阪神「御影駅」より徒歩約7分/JR神戸線「住吉駅」より徒歩約13分(お子さま連れの場合は15〜20分程度)
院長 河崎 真也(日本歯科放射線学会 認定医・日本小児歯科学会 所属)
📚 参考文献
- 日本歯周病学会『歯周治療のガイドライン』
- 日本小児歯科学会『小児の歯周疾患マニュアル』
- American Academy of Pediatric Dentistry(AAPD)『Periodontal Diseases of Children and Adolescents』
- 医歯薬出版『小児歯科学』第6版
監修者プロフィール
河崎 真也(かわさき まさや)
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/医療法人茜会 理事長
日本歯科放射線学会 認定医/日本小児歯科学会 所属
神戸市東灘区御影で、小児歯科・小児矯正・口腔機能育成(お口育て)を専門に診療。子どもの歯ぐきトラブルについては、生え変わりの段階や全身の状態も踏まえ、レントゲン診断と長期的な視点でご家族にご説明しています。
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乳歯のむし歯を放置するとどうなる?|永久歯への影響と治療の必要性|小児歯科医監修|みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック
2026年06月23日
監修:河崎 真也(みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/医療法人茜会 理事長)
日本歯科放射線学会 認定医/日本小児歯科学会 所属
神戸市東灘区御影で小児歯科・小児矯正・口腔機能育成を専門に診療
公開日 2026年6月12日/監修日 2026年6月12日
「乳歯はどうせ抜けるから、むし歯になっても治療しなくていいのでは?」――東灘区/御影の当院でも、保護者の方からこうしたご質問をいただくことがあります。とても自然な疑問ですし、決しておかしな考えではありません。けれども、乳歯のむし歯を放置することには、その後の永久歯やお口の発育に関わるいくつかのリスクがあることが、医学的に分かっています。
乳歯は、いずれ永久歯に生え変わる「仮の歯」ではありますが、その役割は単に食べ物を噛むことだけではありません。永久歯が正しい位置に生えてくるための道案内をし、あごの発育や発音、栄養摂取を支える大切な存在です。本記事では、「乳歯は抜けるから大丈夫」という考えがなぜ誤解になりうるのか、放置したときに起こる4つのリスク、永久歯への具体的な影響、そして治療と予防を両輪で進める「お口育て」の考え方を、神戸市東灘区御影のみかげ小児歯科・矯正歯科クリニックがご案内します。
「乳歯は抜けるから大丈夫」が誤解になりうる理由
確かに乳歯はいずれ抜けて永久歯に生え変わります。しかし、生え変わりまでには長い時間があります。たとえば奥の乳歯(第二乳臼歯)は、10〜12歳ごろまで使い続けます。3歳でむし歯になった乳歯を放置すると、7〜9年もの間、痛みや感染を抱えたまま過ごすことになります。この期間は、お子さまが食べる・噛む・話すという成長の大切な時期と重なります。
また、乳歯はそのすぐ下で永久歯が育っているという特徴があります。乳歯のむし歯が進行して根の先に感染が及ぶと、その下で発育中の永久歯に影響することがあります。「乳歯だけの問題」では済まないことがあるのが、永久歯への生え変わりを控えた子どもの歯ならではの事情です。
乳歯のむし歯を放置すると起きる4つのリスク
乳歯のむし歯を治療せずに放置した場合に考えられる、代表的な4つのリスクを整理します。すべてのお子さまに必ず起こるわけではありませんが、可能性として知っておいていただきたい内容です。
リスク① 痛みで食事や生活に支障が出る
むし歯が象牙質(ぞうげしつ)から歯髄(しずい:神経)に達すると、しみたり痛んだりします。痛みを避けて片側だけで噛む癖がつくと、噛む回数が減ったり、あごの左右のバランスに影響することがあります。よく噛んで食べることは、あごの発育や消化、そして「お口育て」の基本でもあります。痛みでそれが妨げられるのは、成長期のお子さまにとって小さくない影響です。
リスク② 永久歯の発育・形成に影響することがある
乳歯の根の先に膿(うみ)がたまるような強い感染が起きると、そのすぐ下で発育中の永久歯のエナメル質に影響し、変色や形成不全(エナメル質がうまく作られない状態)が生じることがあります。これは「ターナー歯」と呼ばれることがあり、永久歯が生えてきたときに白い斑点や茶色の変色、表面のでこぼことして現れます。乳歯の感染を早めに抑えることは、下の永久歯を守ることにもつながります。
リスク③ 歯並び・かみ合わせに影響することがある
乳歯がむし歯で大きく崩れたり、早く抜けてしまうと、隣の歯がそのスペースに移動してしまうことがあります。すると、後から生えてくる永久歯のための場所が足りなくなり、歯並びに影響するケースがあります。乳歯には、永久歯が生えてくるスペースを確保しておく「場所取り」の役割があります。この役割が早く失われると、矯正治療が必要になることもあります。
リスク④ むし歯菌が増え、他の歯にも広がりやすくなる
放置されたむし歯は、お口の中のむし歯の原因菌(ミュータンス菌など)の住みかになります。その結果、まだ健康な他の乳歯や、新しく生えてくる永久歯にもむし歯が広がりやすい環境ができてしまいます。1本のむし歯を治療し、お口全体のむし歯のリスクを下げることは、これから生えそろう永久歯の健康にも関わります。
永久歯への具体的な影響
乳歯のむし歯放置が永久歯にどう関わるのか、もう少し具体的にご説明します。当院では、レントゲン検査で乳歯の根の状態と、その下にある永久歯の歯胚(しはい:永久歯のもと)の位置や状態を確認しながら、ご家族に丁寧にお伝えしています。
永久歯のエナメル質形成への影響(ターナー歯)
前述のとおり、乳歯の強い感染は永久歯のエナメル質形成に影響することがあります。生えてきた永久歯に変色やでこぼこが見られる場合、過去の乳歯の感染が関係していることがあります。すべてのケースで起こるわけではありませんが、感染を早めに抑えることが予防につながります。
萌出位置・スペースへの影響
乳歯が早く失われると、隣の歯が傾いたり移動したりして、永久歯の萌出(ほうしゅつ:生えてくること)する位置やスペースが乱れることがあります。とくに奥歯(乳臼歯)を早く失うと、6歳臼歯(第一大臼歯)が前方に寄ってしまい、永久歯の並ぶスペースが不足することがあります。こうした場合は、スペースを保つための装置(保隙装置:ほげきそうち)を使うことがあります。
生え変わりのタイミングへの影響
乳歯の根の先に炎症が起きると、その下の永久歯の生え変わりのタイミングが早まったり遅れたりすることがあります。レントゲンで永久歯の発育状況を確認しながら、自然な生え変わりを待つか、介入するかを判断します。生え変わりの遅れについては、別記事「永久歯が生えてこない|先天欠如・晩生・受診の目安」もご参照ください。
乳歯のむし歯が見つかったときの治療の流れ
乳歯のむし歯が見つかっても、すべてをすぐに削るわけではありません。進行の程度に応じて、お子さまの負担が少ない方法から段階的に考えます。治療内容の詳しい選択肢は、別記事「子どもの虫歯治療|進行ステージ別の対応」でご案内しています。
初期のむし歯(CO・C1)はフッ化物や経過観察で対応することも
穴があいていないごく初期のむし歯(CO)は、フッ化物(フッ素)塗布や丁寧な歯みがきで、進行を抑える可能性があります。すぐに削らず、定期的に経過を見ていく場合もあります。お子さまの年齢やむし歯のリスクに応じて判断します。
進行したむし歯は段階に応じた治療を
象牙質まで進んだむし歯はコンポジットレジン(歯科用プラスチック)で詰め、歯髄まで達したものは神経の処置を行うなど、進行段階に応じて治療します。当院では、お子さまの不安にできるだけ配慮し、声かけや段階的な慣らし(Tell-Show-Do)を大切にしながら進めます。痛みへの配慮や、お子さまのペースに合わせた進め方をご相談いただけます。
治療と予防の両輪で進める「お口育て」
むし歯の治療は、いわば「今ある問題への対応」です。しかし、子どものお口は成長の途中にあります。当院がふだんお話ししている「お口育て」では、治療と同時に、これから新しく生えてくる永久歯をむし歯にしないための予防と、お口の機能を育てる視点を大切にしています。
「治す」だけでなく「育てる」視点
「お口育て」とは、歯並びだけでなく、噛む力・舌の使い方・呼吸・姿勢を含めた口腔機能の発達を、生え変わりの時期に整えていく考え方です。よく噛んで食べる習慣、だらだら食べを避ける食生活、正しい歯みがきや仕上げ磨き、フッ化物の活用、そして定期的なチェックを組み合わせることで、むし歯になりにくいお口の土台をつくります。乳歯のむし歯治療をきっかけに、お口全体の健康を一緒に育てていく視点を、当院では大切にしています。
定期的なチェックで早期に気づく
むし歯は早く見つかるほど、お子さまへの負担が少ない方法で対応できます。定期的に通っていただくことで、初期のむし歯の段階で気づき、削らずに経過観察やフッ化物塗布で対応できる可能性が高まります。予防歯科の通い方については、別記事「子どもの定期健診・フッ素塗布・予防歯科まとめ」もあわせてご覧ください。
よくあるご質問
Q1. もうすぐ生え変わりそうな乳歯でも治療した方がいいですか?
A. その乳歯がいつごろ抜けるか、むし歯がどの程度進んでいるかによります。レントゲンで下の永久歯の発育状況を確認し、まもなく自然に抜けそうで感染も軽ければ、経過観察を選ぶこともあります。一方、抜けるまで時間があり、感染が進んでいる場合は治療をおすすめします。一律ではなく、お子さまの状況に合わせて一緒に判断します。
Q2. 治療を受けさせるべきか迷っています。無理にすすめられますか?
A. 当院では、治療するかどうかを保護者の方が納得して選べるよう、現状とリスク、選択肢を丁寧にご説明することを大切にしています。お子さまの不安が強い場合は、まず歯医者に慣れることから始めることもできます。「今日は見るだけ」というご相談でも構いません。ご家族のペースを尊重します。
Q3. 乳歯のむし歯は遺伝しますか?
A. むし歯そのものが遺伝するわけではありませんが、歯の質や唾液の性質、食習慣など、むし歯のなりやすさに関わる要素には家庭環境が影響します。ご家族でだらだら食べを見直したり、仕上げ磨きの習慣をつくることで、お子さまのむし歯リスクを下げることができます。
📌 乳歯のむし歯は「永久歯と将来のための今」のケアです
早く気づくほど、お子さまの負担が少ない方法で対応できます。
気になる影や色の変化があれば、お気軽に当院までご相談ください。
🦷 みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック
📍 〒658-0048 神戸市東灘区御影郡家1-34-9
📞 050-1784-4369(代表)
🚉 阪急/阪神「御影駅」より徒歩約7分/JR神戸線「住吉駅」より徒歩約13分(お子さま連れの場合は15〜20分程度)
院長 河崎 真也(日本歯科放射線学会 認定医・日本小児歯科学会 所属)
📚 参考文献
- 日本小児歯科学会『小児歯科診療ガイドライン』
- 日本口腔衛生学会『う蝕予防に関する指針』
- 医歯薬出版『小児歯科学』第6版
- WHO『Oral Health for Children』
監修者プロフィール
河崎 真也(かわさき まさや)
みかげ小児歯科・矯正歯科クリニック 院長/医療法人茜会 理事長
日本歯科放射線学会 認定医/日本小児歯科学会 所属
神戸市東灘区御影で、小児歯科・小児矯正・口腔機能育成(お口育て)を専門に診療。乳歯のむし歯については、その下で育つ永久歯への影響まで含めて、レントゲン診断と長期的な視点でご家族にご説明しています。
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